3000年前に生存した古代エジプト人女性、CTスキャンで謎を解明
ブラウン氏によると、今回の新たなスキャンにより、カルトナージュの底面が初めて明らかになり、箱は基本的に後ろで密封した後、漆喰(しっくい)を塗って継ぎ目のない美しい形に仕上げたことが分かった。
また同博物館の研究チームによると、当時のエンバーマー(遺体衛生保全士)たちは、ミイラを直立させ、湿気でカルトナージュを柔らかくし、ちょうど遺体の形に成形した。カルトナージュの背面に切り込みを入れ、遺体を収納した後に密封した。
また同研究チームは、ハルワと呼ばれるミイラにも注目した。ハルワが生存していたのは今から約3000年前で、彼は穀物倉庫の門番だった。スキャンの分析の結果、彼は亡くなった時、40代前半から半ばだったことが分かった。また外見から判断すると、彼は社会的に高い地位にあり、快適な生活を送っていたようだ。
ドレイク氏は「この2人の人物を調べ始めた主な理由は、年齢や性別、明らかな病状、その他の目に付いた事柄の理解を深めるためだった」と述べ、さらに次のように続けた。
「一つ、我々が注目しているのは、2人の歯にかなりの摩耗が見られる点だ。その理由として、彼らは砂漠の近くに住んでいたため、食べ物に多くの砂が混じっていたこと、あるいは、彼らは石で食べ物をすりつぶしていたことが挙げられる。しかし、二人の体には大きな損耗は見られない。2人は高い地位にあり、あまり肉体労働はしていなかったと見られる」
CTスキャンは、科学者らが、ミイラとなった人々が患っていた可能性のある慢性疾患を理解する上で役立つが、同時に「人違い」の訂正にも役立つ。ハルワとレディー・チェネット・アーは、どちらも自分専用の棺を作らせたことは明白だが、ミイラ化されたすべての人々が2人のように幸運だったわけではない。
ある棺には神官が収められていることを示す象形文字が刻まれているが、実際に納められていたのは、その棺よりもはるかに小さい14歳の少年の遺体だった。
ドレイク氏は「人々がミイラ化されたいと心から願っていても、常にそのための最適な手段を持っていたわけではない」とし、「他人の棺を借りたり、使ったりすることで、棺を安く入手できた」と付け加えた。