人間の致死量超える放射線に耐えられる細菌、能力の秘密が明らかに

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過酷な環境でも生き延びる能力を持つことで知られる「デイノコッカス・ラジオデュランス」/Michael Daly/USU

過酷な環境でも生き延びる能力を持つことで知られる「デイノコッカス・ラジオデュランス」/Michael Daly/USU

(CNN) 「デイノコッカス・ラジオデュランス」と呼ばれる細菌の一種は最も過酷な環境でも生き延びる能力を持つ。「英雄コナン」にちなみ「コナン・ザ・バクテリア」というニックネームが付けられており、人間の致死量の2万8000倍もの放射線に耐えられる。今回、その能力の秘密が抗酸化物質にあることが分かった。

科学者は抗酸化物質の働きを解明し、地球上の人間と将来地球外を探索する人々の健康を守るために抗酸化物質を利用できる可能性を解き明かした。

抗酸化物質はマンガン、リン酸塩、アミノ酸のペプチド(分子)を含む代謝産物と呼ばれる小さな分子の単純な集合体で構成されている。

米国科学アカデミー紀要に9日に発表された研究で、この強力な三つの成分を組み合わせると、マンガンと他の成分の一つのみを組み合わせた場合よりも放射線に対する防御効果が高いことが明らかになった。

研究の著者らによると、この発見は、将来太陽系を横断する深宇宙ミッションで宇宙飛行士を高線量の宇宙放射線から守るために活用できる可能性がある。

抗酸化物質の秘密を解明

デイノコッカスは最も放射線耐性が高い生物としてギネス世界記録に登録されている。これまでの研究で、この細菌は国際宇宙ステーション(ISS)の外で3年生存できることがわかっている。酸や寒さ、脱水状態にも耐えられる。

2022年10月の報告によれば、デイノコッカスが火星に存在していた場合、凍結した状態で何百万年も生き延びていた可能性があるという。

以前、細菌の細胞内のマンガン抗酸化物質の量を測定したところ、微生物が生き延びることができる放射線の量はマンガン抗酸化物質の量に直接関係していることがわかった。つまり、マンガン抗酸化物質が多いほど、放射線への耐性が増す。

乾燥して凍結すると、デイノコッカスは14万グレイに耐えられる。これは人間の致死量にあたる放射線量の2万8000倍だ。

今回の研究では、デイノコッカスにヒントを得て設計された合成抗酸化物質、MDP(メラトニン由来の保護物質)を使用した。

研究チームは、マンガン、リン酸塩、DP1と呼ばれるペプチドを含むMDPの活性成分が、細胞やたんぱく質を放射線被ばくからどのように保護するかを分析。ペプチドとリン酸塩がマンガンに結合すると、放射線に対する保護にきわめて効果的な三元複合体が形成される。

ユニフォームド・サービス大学の病理学教授であるマイケル・デイリー氏は「MDPに関する今回の新たな理解はさらに強力なマンガンベースの抗酸化剤の開発につながる可能性がある。これは医療や製造業のほか防衛、宇宙探査に応用しうる」と述べた。

また、「MDPは単純で費用対効果が高いうえ、無毒で非常に効果的な放射線防護剤であるため、経口投与することで宇宙放射線のリスクを軽減できる可能性がある」とも指摘する。

地球上では、放射線の漏えい事故に対する保護に使用することも考えられる。

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