小惑星ベンヌが地球にもたらす「衝突の冬」、157年後にわずかな可能性
もしもベンヌが海上に落下した場合は、巨大津波が起きて大量の水が大気へと蒸発する。この現象に伴う世界的なオゾン層の破壊は何年も続く可能性がある。
釜山国立大学の研究者によると、二酸化炭素などの温室効果ガスが長期的な温暖化を引き起こすのとは対照的に、小惑星衝突で発生する粉塵(ふんじん)やすす、硫黄などの気候活性エアロゾルは、何年にもわたって寒冷化を引き起こす可能性がある。
4億トンのちりが地球の大気を循環するという最悪の事態を想定した場合、気温が下がって日光が減り、降雨も少なくなる「インパクトウィンター(衝突の冬)」が世界を覆う。
研究によると、空中に舞い上がった粉塵は太陽光を吸収して散乱させ、地表に届くのを妨げる。そのため世界の気温が急激に下がり、最大で4度低下する。気温が低くなれば地上での蒸発量が減り、降水量は最大で15%減る可能性がある。オゾン層は最大で32%もの減少が予想される。
衝突した場所によっては、さらに甚大な影響が出かねない。
粉塵の粒子は最大で2年間、大気中にとどまり続け、衝突後4年以上にわたって世界的な「インパクトウィンター」を引き起こし得る。突然の冬によって作物が育ちにくくなり、陸上および海洋の生態系では光合成が当初20~30%減る。「そうなれば世界の食糧安全保障に大混乱が起きるだろう」と研究者は解説している。