天の川銀河内から届く謎の電波パルス、発信源は矮星の連星だった 研究

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赤色矮星(左)と白色矮星が互いを密接に周回する様子を描いた想像図。天文学者は、この接近した軌道によって恒星の磁場が相互作用し、2時間ごとに電波パルスが放出されるとの見方を示す/Daniëlle Futselaar/artsource.nl

赤色矮星(左)と白色矮星が互いを密接に周回する様子を描いた想像図。天文学者は、この接近した軌道によって恒星の磁場が相互作用し、2時間ごとに電波パルスが放出されるとの見方を示す/Daniëlle Futselaar/artsource.nl

(CNN) 北斗七星があるおおぐま座の方向から、宇宙の鼓動のごとく2時間ごとに30秒から90秒間届く電波パルスの発信源は、白色矮星(わいせい)と呼ばれる星の残骸と、宇宙では最もありふれた小さく低温の恒星である赤色矮星の連星であったことが、今月12日、英天文学誌「ネイチャー・アストロノミー」に発表された研究結果で分かった。

まとめて「ILTJ1101」と呼ばれるこの二つの恒星は、互いの磁場が相互作用するほど密接に周回し合い、「長周期電波過渡現象 (LPT) 」を発している。これまで、長周期の電波バーストは中性子星にしか由来しないと考えられていた。中性子星とは、巨大な恒星が爆発した後に残る高密度の残骸である。

だが今回の発見により、ペアを成す連星の動きによってもLPTが発生する可能性が示された。

「我々は初めて、謎に包まれた新しい種類の『長周期電波過渡現象』でどの恒星が電波パルスを発生させるのかを突き止めた」と、豪シドニー大学の博士研究員で、研究の筆頭著者であるアイリス・デ・ルイター氏は述べた。

謎を解明するため、デ・ルイター氏は、欧州各地に設置されている電波望遠鏡「LOFAR」の観測データから、数秒から数分続く電波パルスを特定する方法を考案した。

同氏は2015年の観測から一つのパルスを発見後、同じ空の部分に焦点を当て、さらに六つのパルスを発見した。それらはすべて赤色矮星から発生しているように見えたが、デ・ルイター氏は赤色矮星が単独で電波を生成できるとは思わず、何か他のものが誘発していると考えた。

このパルスは非常に明るく、数ミリ秒単位の閃光(せんこう)を放つ「高速電波バースト(FRB)」とは異なっていた。ほとんどのFRBは銀河系外から発生し、繰り返し発生するものもあるが、多くは1回きりの現象のようだとデ・ルイター氏は説明した。

LPTとFRBは連続的な現象なのか、それとも別個の現象なのかという大きな疑問が残っていると、米ノースウェスタン大学天体物理学学際探査研究センターの助教で、研究の共著者であるチャールズ・キルパトリック氏は述べた。

デ・ルイター氏と研究チームは、米アリゾナ州ホプキンス山のMMT天文台にある口径6.5メートルの多重反射望遠鏡と、テキサス州デービス山脈のマクドナルド天文台にあるホビー・エバリー望遠鏡のLRS2装置を使用して、赤色矮星の追跡観測を行った。

観測の結果、赤色矮星は急速に往復を繰り返し、その動きは電波パルスの2時間周期と一致していた、とキルパトリック氏は振り返る。往復運動を行うのは、別の星の重力が赤色矮星を引っ張っているためだった。研究チームが動きを測定し、伴星の質量を計算したところ、白色矮星であることが分かった。

今回の研究では、地球から1600光年離れたところにある二つの恒星が、共通の重心を125.5分ごとに公転しながら、共にパルスを発生させていることが明らかになった。

研究チームは、パルスの原因には二つの可能性があると考えている。白色矮星に強い磁場があり、それが定期的にパルスを放出しているか、あるいは赤色矮星と白色矮星の磁場が公転中に相互作用しているかだ。

今後研究チームは、ILTJ1101を観測し、この星系から放射されている可能性のある紫外線を調査する計画だ。これにより、二つの恒星が過去にどのように相互作用していたか、さらに明らかになる可能性がある。

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