存在感増すイスラム保守主義、戌年迎え摩擦も マレーシア
クアラルンプール(CNN) 16日の春節(中国文化圏の旧正月)から始まる新年の干支(えと)は戌(いぬ)だが、マレーシアでは犬を「不浄」と考えるイスラム教徒への配慮から、戌年の飾りを控える店などが目立っている。
マレーシアは人口3000万人のうち約6割がマレー系のイスラム教徒、約4分の1が中国系で、ほかにインド系の住民もいる。国教はイスラム教で、イスラム法に基づく裁判所もあるが、憲法上は政教分離の世俗主義国家だ。
同国で最近、イスラム教保守派が勢いを増していることに、中国系の住民は懸念を募らせてきた。
首都クアラルンプール郊外のショッピングセンター、サンウェイ・ピラミッドでも、新年の装飾に犬のデザインを使わないことが決まった。しかし広報担当者によると、この方針に対してソーシャルメディア上で非難が集中。ボイコットを呼び掛ける声も上がっているという。
ここに店を出す中国系マレーシア人の女性は「中国系を軽視する態度だ。それならイスラム教徒だけの国を作るべきだが、ここには仏教徒やヒンドゥー教徒もいるのが現実」と話す。
クアラルンプールの中華街で新年の飾りを売る店も、犬のデザインが入った商品を外に並べず、店内に置いている。
ロイター通信は先月、同市中心部のショッピングセンター、パビリオン・モールが宗教上、文化上の配慮から戌年の装飾を避けることにしたと伝えた。
今年初めには大型スーパーチェーンが、春節向けに売り出すTシャツの十二支から犬とイノシシの絵を外したことが判明して物議を醸した。イスラム教ではイノシシを家畜化したブタも不浄な生き物としてタブー視されている。