政治家に転身した人気ラッパー、銃撃され死亡 インド
(CNN) インドで人気ラッパーから政治家に転身したシドゥ・ムース・ワラ氏(本名シャブディープ・シン・シドゥ)が、自宅近くで何者かに銃撃されて死亡した。28歳だった。警察は銃撃した犯人の行方を追っている。
パンジャブ州警察が記者団に語ったところによると、ムース・ワラ氏は29日、同州マンサ地区にある自宅近くで車を運転中に銃撃され、搬送先の病院で死亡が確認された。
現場からは、9ミリ拳銃を含む少なくとも3種類の銃から発砲された空の薬莢(やっきょう)約30発が見つかった。
この事件に関連して、カナダのギャング団メンバーがムース・ワラ氏の殺害を認めたとされ、パンジャブ警察はギャング同士の抗争が絡む事件とみている。しかし政治団体は、同州の与党、庶民党(AAP)がムース・ワラ氏の殺害を許したと主張している。
インドの与党、インド人民党(BJP)は「シドゥ・ムース・ワラ氏は州が関与する殺人犯に銃撃された。全責任はAAP政府にある」との声明を発表した。
パンジャブ州のバグワント・マン首相(AAP)は「シドゥ・ムース・ワラ氏の残忍な殺害に衝撃を受け、深い悲しみに暮れている。関与した者は誰一人として許されない」とツイートした。
警察によると、ムース・ワラ氏はほかの2人と共に午後4時半ごろ車で自宅から出かけ、約1時間後、前方から近づいてきた車2台から銃撃された。
インドのPTI通信によると、この事件に先立ちパンジャブ州政府は、議員や職員424人に対してそれまで提供していた警護を縮小・撤回すると発表。うち122人は政治家で、ムース・ワラ氏も含まれていた。
警察によると、ムース・ワラ氏は通常は隊員4人の警護を受けることが可能だったが、そのうち2人は別の職務を割り当てられていた。それでも武装した隊員2人に警護させることは可能だったが、29日は警察の身辺警護なしで出かけることを選んだという。
ムース・ワラ氏は防弾車を使用することも可能だったが、これも使っていなかった。
ムース・ワラ氏は2017年に初の楽曲をリリースして有名になり、インスタグラムでは800万人のフォロワーを獲得。音楽ビデオはユーチューブで何百万回も再生されている。
21年には政界に進出してインド国民会議派(INC)に所属。2月のパンジャブ州議会議員選挙でAAPの対立候補に敗れた。
訃報(ふほう)を受けて人気ラッパーのドレイクは、ムース・ワラ氏の写真をインスタグラムに投稿し、「RIP(安らかに眠ってください)ムース」と書き込んだ。