フットボール、それともサッカー? そこには複雑な歴史が
アソシエーション・フットボールとその丸いボールが大西洋を渡る頃には、米国では既にアメリカン・フットボールが人気を博していて、フットボールといえばアメリカン・フットボールを指していた。
アソシエーション・フットボールとは異なり、アメリカン・フットボールは主に手でプレーするスポーツで、楕円(だえん)形のボールを使う。
時計の針を進めて1974年。米国の統括組織である「米サッカーフットボール協会(USSFA)」はフットボールという語から距離を置き、組織の名称を「米サッカー連盟」に変更した。通常「USSF」または「US Soccer」と呼ばれる。
80年代までには、この世界的スポーツの名称としてサッカーを好む英国人はますます少なくなっていた。今日の英国ではサッカーという表現はめったに使われず、それは世界の大半の地域でも同様だ。
ブリタニカ百科事典によると、「サッカーという言葉が普及している他の国としては、米国のように競合する複数のフットボールを持つ国がある」という。
「例えば、カナダにはグリッドアイアン・フットボールという独自のフットボールがある。アイルランドはゲーリック・フットボール発祥の地だ。オーストラリアでは(ラグビーに由来する)オーストラリア独自ルールのフットボールの人気が高い。フットボールと言うとあいまいになる場所では、サッカーの表現が便利で正確だ」(同事典)
94年には米国でワールドカップ(W杯)が開催され、サッカー熱は頂点に達した。