パリ五輪で金メダルなしのインド、人口１４億人の大国はなぜ力を発揮できないのか

アナリストらによると、インドのアスリートは資金や施設の不足などに直面することが多い。

スポーツアナリストのボリア・マジュンダル氏は、１４億人の人口に対してメダルが６個しかないという見出しは間違っているとし、１３億９０００万人がスポーツ施設を利用できないからだと説明する。

インドがオリンピックに派遣する選手やサポートスタッフの数も米国などのトップチームに比べてはるかに少ないという。例えば、パリ大会に派遣されたインドの選手は１１７人だったが、米国の選手は約６００人だった。

専門家によると、インドはより広範な健康問題にも直面している。それが幼少期からの運動能力の開発を妨げているという。

インドは２３年版世界飢餓指数報告書で１２５カ国中１１１位だった。報告書によると、インドの５歳未満の子どもの３分の１以上が栄養失調のために発育が遅れている。

もう一つの課題は家父長制が深く根付いたインドで女性アスリートが直面する障壁だ。

１６年のリオ五輪で銅メダルを獲得したレスリングのサクシ・マリク選手は「レスリングを始めた子どものころから、まわりに『女の子なのに何ができるんだ、なぜ男のスポーツに参加しているんだ』といじめられた」と振り返る。

開花していない潜在能力

インドのオリンピックにおける潜在能力はおそらく、クリケットにおけるインドの地位を見ればよく分かる。クリケットは同国で非常に人気が高く、世界でも圧倒的な勢力を誇る。

クリケットは１９００年の五輪以降、種目に含まれていないが、２０２８年のロサンゼルス大会で復活する予定で、金メダルを目指すインドの選手やファンを沸き立たせている。

数十億ドルが投資されているクリケットのプレミアリーグは同国におけるスポーツ投資の最も顕著な例だが、他のスポーツも近年、企業によるスポンサーシップや政府による資金援助が増えている。

モディ首相は１８年、特に地方の才能ある若者を発掘し資金援助することを目的とした全国的なプログラムを立ち上げた。

インドのスポーツ省は２４年７月時点で、同プログラムのもと、スポーツインフラ開発費用として州政府に約２億６０００万ドル（約３８０億円）を割り当てている。