海に浮かぶ「フロート空港」 実現の可能性は?
この構想によれば、630億ドル近い工費をかけ、6本の滑走路を持つ空港をテムズ川河口の水上に建設する。高速鉄道用の海中トンネルによって陸地と接続する計画だ。
ゲンスラーのマネジングディレクター、イアン・マルカーイー氏によれば、検討対象となった選択肢は2つ。まず東京メガフロートのような浮体式の構造を考えたが、テムズ川の水深では浅すぎて不可能なことが判明。代わりにオランダの干拓地「ポルダー」に似た構想が選ばれた。堤防により空港の敷地となる場所を囲ったうえで排水し、乾燥した平面地帯を作るものだ。
マルカーイー氏は、この種の大型プロジェクトに必要な大規模用地の買い取りを行わなくても済むとして、水上建設の利点を指摘する。ただ、ロンドンの空港拡張計画をめぐる最終決定はまだ下されていないとも強調している。
英国の運輸相は6月30日、国民投票で英国の欧州連合(EU)離脱が決まったことを受け、こうした決定を少なくとも10月まで延期すると発表した。
フロート空港の実現可能性については数十年にわたり研究が行われてきた。これによれば、最終的に問題となるのは、技術的な側面ではなく経済面をうまくやり繰りすることだ。
ただ、石油業界の例が示すように、差し迫った必要性があり利益が上がる見通しも立てば、大半の障壁は乗り越えることができる。過酷な自然環境の中でも多くの石油掘削装置が稼働しているのがその証拠だ。フロート空港についてもいずれ同様のことが言えるようになるかもしれない。