虫が「兵器」に? 米軍出資の研究、生物テロへの悪用を懸念する声
リーブス氏らの視点からすると、水平的遺伝子改変の因子を生態系内に拡散することの意味合いは「深刻」で、特に虫を使った運搬システムの場合はなおさらだ。
論説では「どの植物や土地が遺伝子組み換えウイルスに感染したのか、常に確定できるとは限らない(虫の動きや農作物のウイルス感染のしやすさには不確実性が伴わざるを得ないため)」と指摘。さらに、こうしたバイオテクノロジーは単純化され、作物種への伝染が極めて容易な「新手の生物兵器」を生み出すのに利用されかねない、言い換えれば、農作物を根絶する攻撃に使われかねないと警告している。
「デュアル・ユース」
一方、DARPAの報道責任者ジャレッド・アダムス氏は、論説の一部の主張には同意できないと主張する。DARPAそのものは研究は行っておらず、資金を提供している。
ただしアダムス氏は、技術の「デュアル・ユース」の可能性に関しては懸念を共有する姿勢も示した。米政府の定義では、デュアル・ユースとは商用と軍用の両方に利用できるモノや技術などのことを指す。
デュアル・ユースの可能性に関する懸念を踏まえ、DARPAではインセクト・アライズ・プログラムを「透明性を持った大学主導の基礎研究」として構成しており、規制当局者や倫理学者の積極的な参加も受け入れているという。
プログラム・マネージャーを務めるブレーク・ベクスタイン氏は声明で、主要作物を守るための現在の手法や技術では、米国の食料安全保障を危機に陥れかねない深刻な脅威に迅速に対応できないと指摘。ありうる危機として、干ばつや洪水および「敵による意図的な攻撃」を挙げた。