準備期間は30年――中国のネット検閲が迎える試練の年

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警官の前で抗議を行うウイグルの人々=2009年、新疆ウイグル自治区ウルムチ/Guang Niu/Getty Images AsiaPac/Getty Images

警官の前で抗議を行うウイグルの人々=2009年、新疆ウイグル自治区ウルムチ/Guang Niu/Getty Images AsiaPac/Getty Images

(CNN) 中国北西部の新疆ウイグル自治区に住む英語教師のジェシーさんは、2009年に自治区の首府ウルムチ市で騒乱事件が発生した時、朝まで事件に関する記事を読んだり、友人に自分の無事を知らせるメールを書いたりしていた。

翌朝、メールをチェックすると、驚いたことに受信メールが1通もなかった。ジェシーさんは、データが全くロードされていないことに気付いた。

ウルムチ市で1日かそこらの騒乱が起きただけで、当時2000万人もの人々が暮らしていた新疆ウイグル自治区全体でインターネットが使えない状態が10カ月も続いた。

インターネットカフェや旅行代理店など、インターネットに依存する企業はすぐに立ち行かなくなり、その他の企業もインターネットを求めて1000キロ離れた隣の甘粛(かんしゅく)省に従業員を派遣する羽目になった。中には、顧客への連絡や、大学で使用するアプリケーションのアップデート、家族への近況報告のために24時間の車の運転を毎週続けた人もいたという。

それから約10年が経過した今、09年は中国による新疆ウイグル自治区に対する抑圧的政策だけでなく、インターネット統制の強化も明確化した年と考えられている。

09年は、中国のネット検閲システム「グレートファイアウォール」の設計者らが当時直面した最大の試練であり、彼らは検閲システムに対する批判者らが衝撃を受けるほどの激しい攻撃で問題に対処した。

しかし、19年は09年よりもさらに大きな試練となる可能性がある。

「インターネット・メンテナンス・デー」

今や中国は、グレートファイアウォールの中で、世界最新鋭のトップダウン検閲装置を構築したが、これは主に海外からの情報を対象としている。日々の管理の大半は、中国国内のウェブを支配する名目上は民間の企業に勤務する検閲官らの手に委ねられている。

中国政府が検察官らに明確な指針を与えることはめったにない。彼らは、不適切とみなされる情報を自ら予測し、先読みしなければならず、失敗すれば本来遮断すべき情報を通過させたとして処罰される。

特に1989年に天安門事件が発生した6月4日は、最も慎重な対応が求められる日であり、過剰な監視が一層強化される。

香港で開かれた天安門事件の犠牲者を追悼する集会=2018年6月4日/Anthony Kwan/Getty Images AsiaPac/Getty Images
香港で開かれた天安門事件の犠牲者を追悼する集会=2018年6月4日/Anthony Kwan/Getty Images AsiaPac/Getty Images

19年は、中国政府による新疆ウイグル自治区に対する弾圧への反発がかつてないほど高まっている中で、首府ウルムチ市の騒乱事件から10年を迎えるが、今年は天安門事件から30年でもある。検閲官らは、これまで何とか中国国民の意識から天安門事件をほぼ消し去ることに成功してきたが、今年は彼らにとって最後にして最大の試練となるかもしれない。

中国国内の活動家らは間違いなく、検閲官らを試そうとするだろう。また天安門事件が起きた30年前に生存し、当時、希望を打ち砕かれたことを覚えている多くの人々は、検閲官らに報いを受けさせようとするだろう。しかし、フェイスブックやツイッターなど、多くの海外のネットサービスが遮断され、多くの中国サイトが一時的に閉鎖される中、09年当時よりもさらに強化されたグレートファイアウォールが彼らの前に立ちはだかる。中国のネットユーザーの間では、彼らが遭遇した多くのエラーメッセージに対する皮肉を込めた「インターネット・メンテナンス・デー」という言葉も生まれている。

2019年はさらに、宗教団体「法輪功(ほうりんこう)」の弾圧(中国のネット上では現在もこの件への言及が固く禁じられている)から20年、ダライ・ラマ14世のインドへの亡命から60年にも当たる。

世界中に拡散

米政府が出資して設立されたNGO組織フリーダム・ハウスがまとめたインターネット検閲に関する最新の報告書によると、中国は依然として「世界で最もインターネットの自由を侵害している国」のひとつだという。

中国政府は、世界中の独裁政権や名ばかりの民主政権に対して、独自のインターネット検閲モデルの輸出を増やしており、訓練や、技術的、思想的な支援を提供することにより、各国が中国のインターネットシステムを導入するのを後押ししている。

中国は、中国式のインターネット監視システムを世界各地に輸出している/Kevin Frayer/Getty Images AsiaPac/Getty Images
中国は、中国式のインターネット監視システムを世界各地に輸出している/Kevin Frayer/Getty Images AsiaPac/Getty Images

その取り組みを監督する検閲官らにとって、今年節目を迎えるウルムチ市での騒乱事件や天安門事件から10月の中華人民共和国建国70周年を祝う華やかな祭典まで、中国政府に対するいかなる批判も封じ込められることを証明することによって、今年は1年を通じてインターネット管理の有効性を実証する絶好の機会となるかもしれない。

中国の活動家や反体制派は、間違いなく、検閲者らがこの最新鋭のインターネット検閲技術の性能を誇示するのを邪魔しようとするだろうが、彼らの試みが失敗に終わる可能性は極めて高い。中国で数年にわたり検索の検閲を行った後、09年に中国からの撤退の準備をしていた米グーグルでさえ、今や中国政府に協力し、中国市場専用の自主検閲アプリを開発している。

仮に検閲官らが思うように議論を抑え込めなかったら、10年前に新疆で行い、その後も中国各地で行ってきたように、インターネットを完全に遮断するだけだ。そして中国のネットユーザーは、これは検閲官たちのウェブであり、自分たちはその上に投稿しているにすぎないことを思い知らされるだろう。

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