世界最大規模の機内食工場、その驚愕のスケールとは
ハイマイヤー氏によると、食材を調理してから乗客が実際に食べるまでの保存期間はわずか72時間だという。安全規制により、民間航空機内では直火で焼くことが禁じられているため、客室乗務員は調理済みの冷凍食品を温めるだけだ。
工場の傍らで、山のようなエッグマヨネーズがロールパンに塗られる。作業は2人の作業員が協力して行う。1人がミニベーグルの上にクリームチーズを塗り、もう1人が薄切りのスモークサーモンを添える。レストランのような盛り付けにするために、複数の作業員が作った「お手本」も用意されている。
ところで、気圧の食べ物への影響はないのだろうか。たしかに料理の見栄えは大事だが、肝心要の味の方はどうだろうか。
高度1万メートルの機内では、与圧による湿度の低下が人間の味覚に影響を及ぼし、食べ物や飲み物の味が落ちるといわれるが、ハイマイヤー氏はこの見解に異議を唱える。
「例えばエアバスA380やボーイング777の新型機には新技術の導入や莫大な投資がなされ、現在、航空機内は、標高2500メートルのスイス・アルプスのヴェルビエと同じ状態だ」
ハイマイヤー氏は「ヴェルビエで、シェフやソムリエにその標高に適した食事やワインを注文する人はいない。もっとも、現在の機内環境でも、地上なら味わえるはずの繊細な味を上空で味わうことはできないかもしれない。しかし、この問題は大胆な味付けにすることにより軽減できる」と指摘。