パンナム:世界の空の旅を変えた国際航空のパイオニア
(CNN) 旅行業界アナリストで米サンフランシスコに拠点を置くアトモスフィア・リサーチ・グループの創業者でもあるヘンリー・ハーテフェルト氏は、毎週金曜日の夜、年代物の航空会社のカクテルグラスにカクテルを注ぎ、かつて存在した航空会社を懐かしみながらツイッター上で乾杯する。
12月上旬、ハーテフェルト氏が豊富なグラスコレクションの中から選ぶのは、パンアメリカン航空(パンナム)の象徴的な青い地球のロゴが描かれたグラスだ。
パンナムは今から30年前の1991年12月4日の最終便をもって、約65年の歴史に幕を下ろした。パンナムの破産宣告から30年の月日が流れたが、同社のブランドは今でも大衆文化に影響を与え続けているようだ。
スウィングする60年代
パンナムは、米国初の旅客機ボーイング707のローンチカスタマーだった。そして1958年10月、ニューヨーク発パリ行きの同社初の707旅客機が「ジェット旅客機時代」の到来を告げた。
当時、最高級の服で身を包んだ有名人やスター、裕福な旅行者たちが、パンナム機での空の旅を終え、タラップを降りる姿をよく写真に撮られた。
64年にビートルズが米国のテレビに初出演するためにニューヨークに降り立った時、彼らが降りてきたのは「クリッパー・ディファイアンス」と呼ばれるパンナムの707型機だった。
当時は「ブリティッシュ・インベイジョン(英国の侵略)」と呼ばれるほど英国文化が米国を席巻していた。ビートルズもその一環として英国海外航空(BOAC)のジェット機に乗っていてもおかしくなかった、あるいは乗るべきだったのかもしれないが、彼らはパンナム機を選んだ。
ハーテフェルト氏は「恐らくビートルズはあえてパンナム機を選んだ。彼らは、米国を訪問する時は米国の航空会社の旅客機から降りてくる姿を見せたかったのだろう」と言う。
強力なブランド
パンナムは、人気スパイ映画「007」シリーズの第1作「ドクター・ノオ」(1962年)やSF映画の金字塔「2001年宇宙の旅」(1968年)など、数々の映画にも登場した。
受賞歴のある広告関係者で、マーケティングに関するカナダのラジオ番組・ポッドキャストの司会も務めるテリー・オライリー氏は次のように語る。
「自分の番組でパンナムを取り上げてきたが、私は、パンナムが残した同社のブランドに魅力を感じる。パンナムには他の航空会社にはない華やかさがあった。だからこそ、同社の人気がこれほど長く続いているのだろう」(オライリー氏)