破壊された「世界最大の航空機」、写真が捉える現在の姿 ウクライナ
ウクライナ・ホストメル(CNN) その機体の胴体は黒焦げになり、ねじれた穴がぽっかり開いている。巨大な主翼は地面に垂れ下がり、エンジンのうち1基は焼けて大破した状態だ。
同機を支える多数のタイヤはまだ目にすることができる。ぼろぼろの状態ながらノーズコーンも原型をとどめていて、ウクライナの色である青と黄色の線や、正式名称の「225」という数字が誇りを込めて表示されている。
だが、世界最大の商用機である「アントノフAn225」が二度と空を飛べないことは明らかだ。
ロシア軍が先週、ウクライナ侵攻当初の戦略目標の一つだったキーウ(キエフ)郊外のホストメル空港から撤退したのを受け、CNN記者は「ムリーヤ」(ウクライナ語で「夢」の意味)と名付けられた同機の破壊の全容を確認した。
侵攻が始まったとき、ムリーヤは格納庫で整備待ちの状態だった。いま同機は格納庫の破損したアーチの下に、無残に壊れた状態で横たわっている。
周囲の飛行場にはトラックや戦車、装甲兵員輸送車、使用済み燃料など、破壊されたロシアの装備品が散乱している。
An225の破壊は紛争初期の象徴的な損失となった。もともとソ連のスペースシャトル計画を支援する目的で建造された同機は、ウクライナにとって誇るべきシンボルになっていた。
航空の世界にも衝撃が走った。An225は現代航空工学の驚異と称賛され、同機を目玉とする航空ショーや、世界を飛び回る日々の貨物業務の際に見物客を集めることも多かった。
象徴的な地位
同機の破壊が報じられた直後、ウクライナ当局は機体の再建を誓い、ロシアに30億ドル(約3700億円)の再建費用を負担させると表明した。
ウクライナのクレバ外相はこのとき、ツイッターで「ロシアは『ムリーヤ』を破壊したかもしれない。しかし強く、自由で、民主的な欧州の国になる我々の夢を破壊することは決してできない。我々は勝つ」とつづった。
ロシア軍撤退後に空港を奪還したウクライナ軍は、ロシアに対する重要な勝利だと主張。先週末には、CNNの記者たちがウクライナ国家警察とともに飛行場を訪れた。
ムリーヤの破壊の原因は不明。意図的な破壊行為だったのか、それとも空港制圧を狙った攻勢の巻き添えになったのかは分からない。
ただ、An225が大破した状態になっても、多くの兵士は同機の写真を撮っていた。ウクライナ国民の間でムリーヤの象徴的な地位が低下していないことは明らかだった。