飛行機から列車への移行を模索する欧州、その現状は?
しかし、短距離路線を規制する一方で、長距離路線については特に大きな対策は取られていないとの指摘もある。
世界的に見て、炭素排出量が最も多いのは長距離フライトだ。学術誌「ジャーナル・オブ・トランスポート・ジオグラフィー」に最近掲載された学術論文によると、飛行距離が500キロ未満のフライトはEU内から出発する全フライトの27.9%を占めるが、燃料燃焼量は全体のわずか5.9%にすぎない。
それに対し、飛行距離4000キロ超の長距離フライトは、EU内から出発する全フライトのわずか6.2%にすぎないが、燃料燃焼量は全体の47%にも上る。
T&Eのダルデンヌ氏は、「各国政府は、航空業界で炭素排出量が最も多い長距離便を無視し続けており、価格設定も規制もされていない」とし、さらに「政府は、飛行禁止令を人々の注意を真の問題からそらすための手段として利用すべきではない」と付け加えた。
鉄道への移行を阻む障害
権利擁護団体「トレインズ・フォー・ヨーロッパ」の創設者、ジョン・ワース氏は、列車の高額な運賃と本数の少なさが、人々の航空から鉄道への移行を妨げており、特にパリからアムステルダム、フランクフルト、バルセロナに向かうルートなど、主要なルートでその傾向が強いと指摘する。
また、都市間を結ぶ鉄道と空港の接続性が向上すれば、短距離便の必要性は低下する。ワース氏は、列車が遅れて乗り継ぎができなかった旅行者を次の列車に振り替えられるよう、複数の鉄道を組み合わせたきっぷの提供が不可欠と指摘する。
これは、航空会社と鉄道事業者が連携しているドイツ、オーストリア、フランス、スイス、スペインなどで特に有効だ。
ただし、その実現にはクリアすべき課題が多い。例えば、上記のスキームが可能なのは国を代表する航空会社に限られる。欧州委員会は今年、この種のインターモーダル(複数の輸送機関を組み合わせた)旅行をより広範囲で促進することを目的とした「マルチモーダル・デジタル・モビリティー・サービス(MDMS)」と呼ばれる法案を採択する予定だ。
フランスに話を戻すと、列車の移動時間が短縮し、本数も増えれば、現在の飛行禁止措置が見直される時に、より多くの国内線が廃止になるかもしれない(禁止措置の有効期間は3年間)。
その一方で、環境にやさしい飛行技術の進歩により、いずれ地域航空に対する見方が変わる可能性がある。
現在進行中の電気飛行機、ハイブリッド飛行機、水素飛行機の開発プロジェクトの大半は、非常に短い距離を飛行する設計の小型機に特化しているため、航空業界で最初に脱炭素化が実現するのは短距離フライトである可能性が高い。
環境、社会、経済、政治、技術といったこの議論を形作るさまざまな要因が進化し続け、気候危機も続く中、航空が環境に与える影響に関する議論は今後数年間続くと見られる。