オーバーツーリズムに抗議するバルセロナ市民、都市が抱える新たな課題とは
バルス氏は、「誰でも歓迎するが限界はある」と述べ、供給のコントロールが唯一の対応策だと強調した。
スペイン北東部のカタルーニャ自治州政府は今年2月、観光税を最大15ユーロ(約2400円)へ倍増する案を発表。税収の少なくとも25%は住宅対策に充てられる見通しだ。
短期の観光客向け賃貸アパートが住宅不足の一因とされ、市によれば長期賃貸の家賃は10年で68%上昇した。観光客向けアパートにすれば収入が大きいため、利用可能な住宅が足りていないと訴える地元住民もいる。
市は28年に認可済み観光客向けアパート約1万戸の営業許可を取り消す方針だが、業界団体は所有者に多額の補償を求め、無許可物件の増加を懸念している。
観光縮小を訴える市民団体は、観光税の倍増は「観光を正当化するだけで、現状を変えるものではない」と批判している。
大規模な観光地化の弊害

やはりガウディが設計を手掛けたサグラダ・ファミリア大聖堂/ Moritz Wolf/imageBROKER/Shutterstock
バルセロナで最も観光客が集まる主要スポットでは、受け入れ方に変化の兆しが見え始めている。
混雑が深刻なランブラス通りでは昨年、全長1.3キロの遊歩道に携帯電話の動きを活用したセンサーが設置され、人の流れを把握している。混雑が常態化しているカタルーニャ広場付近の狭い区間や港にも同様のセンサーが導入された。
しかしランブラス通りは無料で通行できるうえ、歩道拡幅や車線削減などの工事が進められており、観光客の流れは絶えない。
バルセロナで最も訪問者数が多い有料施設のサグラダ・ファミリアとグエル公園の昨年の来場者数は、それぞれ480万人と450万人近くに達し、オンラインでの前売りチケット制が導入された。
また市は混雑対策として、グエル公園の標準的な入場料を今年から10ユーロから18ユーロに引き上げ、サグラダ・ファミリア周辺のベンチや庭園も撤去した。
増加する観光客に対応するため、港のインフラ整備も進められている。
今年2月にはクルーズ運航会社MSCクルーズ専用の7番目のターミナルが新設されたが、市は将来的に5カ所に縮小する方針を示している。一方、MSC側は新ターミナルの運営権が30年間にわたる契約であると主張している。