米家庭内労働者の知られざる実態 現代の「奴隷制」か、低賃金に虐待も
(CNN) フィリピン出身のアンナさんは、大手企業の幹部家族が住む米ニューヨーク・マンハッタンの5番街に面した賃貸マンションで、子どもの養育もする家政婦として週7日、朝6時から夜10時まで住み込みで働いていた。多くの家事をこなし、15カ月の間1日の休みもなく、夜は子どもたちのベッドの間の床で寝る生活だった。アンナさんは、母国フィリピンで教師としての教育を受けていたため雇われたのだが、時給は1.27ドル(約100円)に過ぎなかった。
先ごろ発表された米国の家庭内労働者に関するリポート「家庭経済学」によると、アンナさんの話は珍しいケースではない。ベビーシッターや家政婦、介護人といった家庭内労働者は、多くの米国人の生活に不可欠で米国経済にとっても重要な役割を担っている。しかし、その実態はあまり知られておらず、賃金や社会保障は不十分で、虐待されることさえ珍しくないという。
同リポートでは、全米14の大都市で働く71カ国・2086人の家庭内労働者をインタビューしている。この種の調査としては初めての試みで、様々な実情が明らかになった。
米国の家庭内労働者は、その大半が女性で、アフリカ系(黒人)やヒスパニック(中南米系)の少数派(マイノリティー)であり、人種や性別で職業が分かれる奴隷制の伝統を引きずっている。最近では移民の割合も増えている。
リポートの共著者の1人でシカゴのイリノイ大のニック・セオドア准教授は、女性の労働が不当に低く評価されていると指摘する。
家庭内労働は、密室での労働で孤立しがちで、労働政策による保護も受けられない。また、雇用契約さえない場合もあり、雇い主の気まぐれに左右されやすい。セオドア准教授は、過酷な作業を強いられる現代の奴隷制みたいなケースもあると懸念を示す。