米、INF全廃条約を停止 「ロシアが長年違反」
ワシントン(CNN) ポンペオ米国務長官は1日、ロシアとの中距離核戦力(INF)全廃条約を停止すると表明した。冷戦時代から欧州の安全保障の要となっていたが、ロシア側の違反が数年にわたり続いたことが要因だとしている。
ポンペオ氏は国務省での会見で「ロシアが反省の色を見せずに長年にわたりINF条約に違反してきた」と言及。ロシアの違反で欧州や米国の国民が多大なリスクにさらされていると主張した。
さらに「適切な対応するのが我々の責務だ」とした上で、米国はロシアが順守を再開するために「十分な時間」を与えてきたと述べた。
履行停止は2日から始まる。今回の動きはかねて予想されていたもので、米ロ間の軍拡競争が再燃する懸念を引き起こし、欧州では同盟国が神経をとがらせる事態となってきた。ロシアが順守を再開しない限り、米国は180日後に完全に離脱する。
INF条約は1987年に締結され、米国はロシアが2014年から違反してきたと指摘している。
トランプ大統領は1日の声明で、「米国は30年以上にわたりINF条約を完全に順守してきたが、ロシアが自国の行動について虚偽の説明を続ける限り、このまま条約の条件に縛られるつもりはない」と表明。「世界で我々だけが一方的にこの条約や他の条約に縛られるわけにはいかない」と述べた。
この後ホワイトハウスでは、新条約の交渉に前向きな考えを記者団に示唆したが、ロシアには言及しなかった。
INF条約の参加国は米ロ2カ国だけだが、欧州の安全保障に及ぼす影響は大きい。条約では核弾頭を搭載した地上発射型巡航ミサイルのうち、欧州にとって脅威となる射程距離約500~5000キロのものを対象としている。