現職大統領に深刻な健康の脅威、トランプ氏の新型コロナ陽性
(CNN) トランプ米大統領は2日未明、同氏とメラニア夫人が新型コロナウイルスの検査で陽性の判定を受けたことを発表した。世界的な大流行が始まって数カ月、再選を目指し専門家の感染拡大防止のガイドラインを軽視する選挙運動を展開する中での異例の事態となった。
トランプ氏の検査結果は過去数十年で現職大統領が直面する最も深刻な健康上の脅威に相当する。74歳という高齢と肥満の体形を考えると、トランプ氏は深刻な合併症のリスクが最も高いグループに分類される。トランプ氏は体重が243ポンド(約110キロ)あり、身長を踏まえると肥満に該当するとみられる。新型コロナ感染では米国で20万人超、世界で100万人超の死者が出ている。
不透明さを増す政治状況や株式市場にもトランプ氏の陽性判定は影響する。
トランプ氏は同日午前1時前、ツイッターに「今夜、ファーストレディーと私は新型コロナウイルス感染症(COVID―19)の検査で陽性と判定された。我々は直ちに隔離と回復のプロセスに入る。これを共に乗り越えていく!」と書き込んだ。
その後、メラニア夫人もツイッターで、メラニア氏も大統領も「気分は良好」と伝えた。
トランプ氏の姿が公の場で最後に確認されたのは1日午後、ニュージャージー州での資金集めの遊説からホワイトハウスに戻ったときだった。具合が悪そうには見えなかったが、住居に徒歩で向かう際に報道陣には語りかけなかった。
トランプ大統領の主治医を務めるショーン・コンリー氏は2日1時ごろ、報道陣に配布された声明で、大統領夫妻が1日夕方に受けた検査で陽性だったとの確認を受け取ったと明らかにした。
コンリー氏は「大統領とファーストレディーのいずれも現時点では良好で、回復する間ホワイトハウスの居住区にとどまる予定だ」「ホワイトハウスの医療チームと私は注意深い観察を続ける。我が国の最高の医療の専門家と機関のいくつかから提供される支援に感謝する」「大統領は回復の間も中断なく職務の遂行を続けられると思われるので安心してほしい。今後進展があれば全て皆さんにお知らせする」と述べた。ホワイトハウスに提供される医療的支援に関する詳細な説明はなかった。
トランプ氏は1日夜、最側近の1人、ホープ・ヒックス氏に新型コロナ感染の陽性反応が出たことを受け、自身とメラニア夫人が「隔離プロセス」に入ることを明らかにしていた。
ホワイトハウスはこれまで、トランプ氏やトランプ氏に接近する人物に徹底的な検査態勢を敷いていると強調していた。側近からはトランプ氏は「この国で最も検査を受けている男」との声も出ていたが、トランプ氏の陽性判定により、感染予防を検査だけに頼るのは不十分なことが示された。
トランプ氏や側近の多くは社会的距離の確保やマスク着用などを避ける姿勢を見せてきた。9月29日の第1回大統領選討論会では民主党候補のバイデン前副大統領が頻繁にマスクを着用することをあざ笑った。
ホワイトハウスはトランプ氏の診断を受け、新しいスケジュールを発表。10月2日に予定されていたワシントンでの資金集めのイベントやフロリダ州での集会などが中止となった。
選挙戦では新型コロナの流行とトランプ政権の対応が焦点となってきた。トランプ氏は現状をすばらしい状況だと自賛し、ウイルスは消えると主張していたが、政権内部からはそれは現実離れしているとの声があった。今回トランプ氏自身が陽性となったことで、各州に学校や経済の再開を求める圧力は弱まりそうだ。トランプ氏は最近の集会でも、民主党の知事が厳しい都市封鎖(ロックダウン)をしていると批判を展開していた。
トランプ氏は自身のコロナウイルスのタスクフォースから受けた医療的な助言を無視し、人々が密集する選挙集会を頻繁に行うスケジュールを組んでいた。最近ではミネソタ州やペンシルベニア州で行われたが、今後は中断することになるだろう。
最側近で陽性が確認されたヒックス氏は、9月29日にテレビ討論会が開かれたオハイオ州クリーブランドなど、トランプ氏が最近訪れた複数の目的地に同行した。30日には、ミネソタ州の集会に向かう大統領専用ヘリコプターに一緒に乗り込む姿が目撃されていた。
ヒックス氏に近い人物がCNNに語ったところによると、本人は新型コロナウイルス感染の症状を示し、首都ワシントンに戻っている。現時点で症状の重さは不明。CNNは同氏にコメントを求めたが、返答は得られていない。