米国の選挙で必要な「有権者登録」とは? 制度や手続きを知る
ワシントンDC(CNN) 米国の各州は有権者に対して、大統領選の前に選挙管理当局で登録手続きを行うように求めている。
有権者登録の制度は州によって違う。ある州はオンラインでの登録方法を提供し、他の州では提供していない。登録の締め切り日も違う。
約3分の2の州が11月3日の「選挙の日」の前に登録を済ませることを要求している。こうした締め切り日は10月の最初の数週間に設定されていることが多い。
残りの州では選挙日当日に有権者登録が可能だ。ただ、ほとんどのケースで有権者本人が投票所に行く必要があり、新型コロナウイルス感染が拡大する今年はそれが困難かもしれない。
もしあなたが引っ越しをした場合、再度の登録が必要となる。CNNの有権者ガイドではあなたの有権者登録の状態をチェックし、既存の登録を変更し、自分の州での登録方法を把握することができる。
CNNは、有権者登録を促すイベント「National Voter Registration Day」のプログラム責任者ローレン・クニス氏に、今年の有権者登録の状況や米国での有権者登録の歴史について電話で話を聞いた。以下の文章は読みやすさを考慮して軽微な編集を施してある。
CNN:米国にはなぜ有権者登録の制度があるのか?
クニス氏:有権者名簿が正確で最新の状態であることを確保するために有権者登録の制度はある。米国の選挙は非中央集権的だ。選挙は郡レベルで行われる。従って、我々の選挙を可能な限り包括的で、正確で、信頼に足るものにするために、有権者登録は定期的に継続して行われる手続きとなる。
CNN:有権者はどのようにすれば登録できる?
クニス氏:選挙は極めて非中央集権化が進んでいるため、その方法はあなたの州による。大半の州ではオンラインで登録が可能だ。登録は2分とかからず、非常に簡単だ。手続きを始めるにはvote.govや我々のサイトを訪れればよい。
もしオンラインでの登録を受け付けていない州にいる場合や州が発行する身分証明書を持っていない場合は、紙のフォームを使って手続きを完了できる。その手続き自体はオンラインで始められる。
知っておくべき重要な点は、有権者登録はシンプルで、容易で、わずかな時間しかかからないということ。そして、自身の声を聞いてもらうための非常に重要なステップとなるということだ。
CNN:何歳になったら有権者登録をできるか?
クニス氏:選挙日に18歳である必要がある。ただ、多くの州では16歳か17歳になると有権者の事前登録ができ、18歳になると自動的に有権者名簿に追加される。
CNN:いくつかの州では有権者はオンラインで登録できず、登録フォームを印刷して送付する必要があるとの説明があったが、もし有権者がプリンターを使えない環境にいる場合はどうなるのか?
クニス氏:それは問題だ。今年のように新型コロナウイルスが流行し、多くの人が在宅勤務をしたり学校に通わなかったりする状況では、プリンターにアクセスできる場所にいないことがあるだろう。だが、我々を含めいくつかの団体が、そのギャップを埋めようと協調して取り組んでいる。
たとえば、あなたが我々のサイトを訪れれば、オンラインで手続きを始めることができる。あなたが自分の情報を全て入力し、送信ボタンをクリックし、数日待てば、我々は印刷して必要な情報を埋めた有権者登録のフォームを、切手と宛先のついた封筒とともにあなたに送ることができる。あとは署名をして、折りたたんで、封筒に入れて送れば、州の設定する期限前に有権者登録を済ますことができる。
従って、大きな問題ではあるが、乗り越えられないものではない。
CNN:なぜ州によって有権者登録の締め切り日が違うのか?
クニス氏:それは非中央集権的な選挙制度から生み出された副産物だ。州によって有権者名簿を認証するために登録処理にかかる時間は異なる。
CNN:非中央集権的な選挙制度の利点は何か?
クニス氏:選挙制度は米国の非中央集権的な制度全体と軌を一にするものだ。また選挙を含む公共政策を地元が担う際に、どういう形が自分たちに適しているかを決めていく主体としては州が一番適しているとの考えに沿うものともなっている。
CNN:わかった。各州の有権者登録の規則や規制の責任者は誰か?
クニス氏:登録は郡レベルで行われ、地元の選挙管理事務所は有権者登録データの第一次収集者のような存在となる。大半の州では州務長官が選挙のプロセスを監督する。他の州では、州の選挙監督官が選挙のプロセスを監督し、州務長官は承認の役割を担っているところもある。
CNN:自分の州の方針についてもっと知りたい人には、地元の選管事務所に行って情報を得ることを勧めるか?
クニス氏:もちろんだ。間違いない。地元での選挙の仕組みについて一番信頼が置け、最新の情報を提供してくれるのは地元の選管事務所だ。インターネットで調べ、電話やメール、または直接訪問してコンタクトを取ることができる。
今年は選挙の環境が本当の試練に直面している。多くの州で新型コロナウイルスの影響で様々な事柄が変わってきている。非常に非中央集権的な制度のため、誤解も生じやすい。多くの人がSNSを見ていて、たとえば別の州に住んでいるいとこが有権者登録の締め切り日は今日だと投稿しているのを見ると、自分もそうなのだと考えてしまう。だが、住んでいる地域によって方針も締め切り日も手続きも違うので、これは事実でない可能性が非常に高い。
ただ一つの、どれにも当てはまる正解というものはない。信頼できる正確な情報を得て、具体的な疑問点を解消するには地元の選管事務所を使うしかない。
CNN:既に触れてはいるが、新型コロナウイルスの流行の中での有権者登録は今までと何が違う?
クニス氏:だいぶ違う。これまでも少し述べたが、ニューノーマル(新常態)があり、我々は進みながらそれを理解しようとし、生活の全てがその影響を受けている。有権者登録もそうだ。
何が必須で何が必須でないかの議論は過去6カ月間続いてきた。我々は選挙は必須であると固く信じているが、その延長線上にある有権者登録も必須のサービスだと考えている。有権者登録がいつもと違う様相を呈するのは、それが継続する必要性のあるものだからであり、実際いつも以上にその重要性は高まっている。なぜなら、米国民が有権者登録を行う一番の方法は陸運局であり、次がコンサートや野外市場など人が多く集まる場所を訪れる際に行う方式だからだ。
いまや陸運局は閉鎖されたり営業時間が短縮されたりして、人々がそこに行くことをためらう状況でもある。多くの学校のキャンパスも閉鎖され、通行量の多い場所は人々が避ける傾向にある。こうした今年の環境は有権者登録にとってより大きな試練となっており、データでも示されている。
4月時点の初期のデータのいくつかは、サンプリングの値で、有権者登録が2016年4月に比べて約70%少なかった。非営利団体「Center for Election Innovation and Research」の報告書によると、有権者登録の水準は3月と4月に大きく落ち込んだ後、6月と7月には徐々に戻り始めた。人々が対応方法をシフトし、登録場所に安全な方法で訪問したり、オンラインを介して有権者登録を行う方法を理解し始めた。それでも、もっと早期に積み上げるべきだった新たな有権者登録の残数はかなりある。
もしこの秋の選挙で記録的な投票率を達成したいなら、記録的な有権者登録数を実現する必要がある。我々は新型コロナの流行による有権者登録の落ち込みが、高い投票率実現への足かせとなるのを放置できない。
CNN:多くの米国人が通常は陸運局で有権者登録をすると言ったが、全米有権者登録法(NVRA)とドライバー投票者条項について説明してもらえるか?
クニス氏:NVRAは有権者が登録を受けやすいようにしたものだ。そこで定められている条件の一つが、新たな免許証の交付や州発行の身分証明書の更新のために陸運局を訪れる際、有権者登録の機会も自動的に付与されるというものだ。
CNN:ドライバー投票者条項は有権者登録を助けるかもしれないが、免許証を持っておらず陸運局を訪れることもない人々に対して差別的なものとならないか?
クニス氏:その条項に元々差別的な性質があるとは思わない。ただ、州が発行する運転免許証を持たない人、取得しようとしない人がいることを認識することは重要だ。誰もが陸運局で登録を受けるとは想定されない。だからこそ、そのギャップを埋めようと運転免許証や州発行の身分証明書を求めなそうな人々をターゲットとした有権者登録のイベントが様々な場所で行われている。
CNN:今年は直接対面する方法は困難な状況だが、そうした人々を対象とするオンラインでの方法は何があるか?
クニス氏:対面での活動も行われているが、新型コロナウイルスを意識したものとなっている。多くの我々のパートナーは机を設置して活動する際、消毒や手洗い、社会的距離の確保を実施している。ボランティアにはより若い人々を採用し、接触のない選択肢も提供する。QRコードも利用可能だ。また、多くの非営利組織や公的機関が有権者登録をサービスに組み込んでいる。既にあるコミュニティーとの接点を活用し、有権者登録がサービスの一部となるようにしている。
フードバンクでは配給する包みに有権者登録の情報を掲載。病院や診療所では退院手続きの書類に登録のフォームを入れたり、待合室で情報を提供したりしている。学用品の配送にも有権者登録の情報が含まれるなど、いくつもの例がある。ドライブスルー形式や駐車場での登録所の設置もある。社会的距離を保つために、新型コロナ感染の恐れがない電話やショートメッセージを使った運動も多く行われている。