バイデン米政権、「エイリアン」一掃へ 法律文に浸透、トランプ氏は好んで使用
(CNN) 米国のバイデン新大統領が打ち出した移民政策の転換の中で、これはほんの小さな一部にすぎない。だが象徴的な意味合いはとてつもなく大きい。
バイデン大統領が提案した移民法の改正案では「alien(エイリアン=ここでは『外国人』の意味)」の単語が法律文から一掃され、代わって「noncitizen(非市民)」という単語が使われる。
新政権が発表した法案の概要ではこの変更について、米国を「移民の国」と認定することを意図した意識的な一歩と位置付ける。
「illegal alien(不法在留外国人)」という用語については以前から、移民を人間扱いしない中傷用語だとして人権活動家の非難の的になっていた。トランプ前大統領時代にはさらに分断が深まり、一部の連邦政府機関トップがこの用語の使用を奨励する一方で、複数の州や自治体は使用禁止の措置を講じていた。
合衆国法典では現在、「alien」を「米国の市民権も国籍も持たない人物」と定義している。
過去の当局者は、米国の法律に浸透しているという理由でこの単語の使用を奨励してきた。2018年、当時の司法長官だったジェフ・セッションズ氏は省内に送った電子メールの中で合衆国法典を引き合いに出し、米国内の不法滞在者を「illegal alien」と呼ぶよう検察に指示していた。
トランプ前大統領は野放しの不法移民を危険な存在と見なす演説の中で、頻繁に「alien」を使用した。メキシコとの国境沿いで先週行った演説では、この単語を少なくとも5回使っていた。
ただしトランプ政権の中でも誰もが好んでこの用語を使っていたわけではない。
国土安全保障省長官代行だったケビン・マカリーナン氏は辞任前の2019年、ワシントンポスト紙のインタビューの中で、自身は「illegal aliens」の使用を避けて「migrants」に置き替えていたことを明かし、「言葉の持つ意味は大きい」「用語の使用によって聴衆の半分を遠ざけてしまえば、論議に勝つ能力が損なわれる」と語っていた。
カリフォルニア州は、2015年に州の労働法典から「alien」の単語を一掃。ニューヨーク市は昨年、市の憲章や行政法典からこの用語を締め出している。
ニューヨーク市は2019年のガイドラインの中で、「人を侮辱したり、屈辱を与えたり、嫌がらせしたりする意図」をもって「illegal alien」の用語を使うことを禁止。違反した場合は25万ドル(約2600万円)以下の罰金を言い渡す可能性があると警告した。
トランプ政権時代に「alien」の用語が注目を集めたのは2017年、当局が「強制送還対象のエイリアンによる犯罪」の被害者のためのホットラインを開設した時だった。
同ホットラインには宇宙人に関する通報のいたずら電話が殺到し、ソーシャルメディアでは火星人やUFOに関する投稿が飛び交った。