米公衆衛生対策、トランプ政権でさらに劣化 報告書
(CNN) 米国で数十年間にわたって続いていた保健衛生対策の不備がトランプ前米大統領の在任4年間でさらに悪化し、新型コロナウイルスの蔓延(まんえん)への悲惨な対応策につながったとする新たな報告書がこのほど公表された。
報告書の作成には米国、英国やカナダの公衆衛生の専門家ら33人が参加。トランプ政権時代における公共政策・保健衛生に関するランセット委員会が発表した。
トランプ政権時代には科学の政治問題化や無視があったとし、健康保険はなおざりにされ、食料支援事業も先細りしたなどと結論づけた。
報告書は、公衆衛生対策を軽視した政策の多くは1980年代のレーガン元政権時代にさかのぼるとしながらも、トランプ氏は在任時代、米国で既に弱体化していた衛生制度やオバマ元大統領による医療保険制度改革の解体を試みたとも指摘。
トランプ氏のこれらの対応は新型コロナ対策での失策の要因ともなり、数万人規模の犠牲者の発生をむだに招いたともした。
また、トランプ氏時代には、ホワイトハウスの国家安全保障会議(NSC)内に設けていた世界規模の公衆衛生安全保障対策チームの廃止や2017年には米疾病対策センター(CDC)での新規雇用の凍結が打ち出され、不測の事態への準備態勢が緩んだとも述べた。CDCでは約700の職位の補充が不可能な状態に追い込まれてもいた。
公衆衛生機関の運営資金は2008年に切り詰められ、前線で働く職員5万人を失ったとも説明。分割され、利益重視型の性格を強めた医療保険制度は新型コロナ予防策の協調態勢を阻むことになったとも主張した。
その上でトランプ政権時代の多くの施策の後遺症は今後も尾を引くだろうとし、気候変動問題などでの悪影響は数世代にわたって続く可能性もあると予想した。