2022年米中間選挙、注目の6州
(CNN) 今年11月は6つの州が米国政治の中心になるだろう。2020年の大統領選でバイデン大統領が共和党から奪ったアリゾナ、ジョージア、ミシガン、ペンシルベニア、ウィスコンシンの5州に、ネバダ州を加えた6州だ。
これらの州ではいずれも、連邦上下院および州政府の勢力図を左右する重要な選挙が複数実施される。これらの州の動向は、中絶の権利や経済政策、教育、気候危機といった様々な問題で、州はもちろん全米規模で影響を及ぼすだろう。
中間選挙を直前に控え、とくに大事な6州とカギを握る選挙戦についてポイントを見てみよう。
CNN選挙センターでは、上下院と州知事選を党派的な偏りなく分析する「インサイド・エレクションズ・ウィズ・ネイサン・L・ゴンザレス」の評価を採用した。
連邦上院選
民主党が引き続き上院での支配を維持するには、少なくとも50議席が必要だ。50議席あれば、カマラ・ハリス副大統領の議長議決権で過半数票を獲得できる。一方共和党が支配するには51議席の確保が必要となる。今回改選される35議席のうち、現在のところ共和党優位は20議席、民主党優位は12議席。3議席はどちらに転んでもおかしくないと見られている。
連邦下院選
下院を手中に収めるには、全435議席中218議席を獲得しなければならない。現在のところ共和党優位は212議席、民主党優位は205議席。18議席が五分五分という見方だ。
注目州
アリゾナ州
おさらい
20年の大統領選でアリゾナ州を勝ち取ったバイデン氏は、民主党指名候補としては1996年のビル・クリントン氏以来初の快挙を成し遂げた。過去70年あまりでアリゾナ州で勝利した民主党指名候補は、バイデン氏とクリントン氏の2人だけだ。
注目ポイント
共和党がアリゾナ州奪還を目指している。20年にバイデン氏が勝利、マーク・ケリー氏が上院議席をひっくり返し、民主党がこのスイングステート(共和、民主の間で勝敗が揺れる州)に進入した。
しかし、そうした大義のために共和党が擁立した候補者は中道派ではない。州知事選ではカリ・レーク氏が、上院選ではブレイク・マスターズ氏がトランプ氏の推薦を受けた。両者とも、バイデン氏がアリゾナ州で合法的な勝者となったことに疑念を呈している。
接戦の行方を左右するであろう大きな有権者のグループが中南米系だ。出口調査によれば、20年にはアリゾナ州の有権者の19%を占めた。この有権者層がカギとなり、バイデン氏は中南米系の票を61%獲得して勝利した。これに対してトランプ氏は37%だった。
民主党が上院の議席を維持しつつ、州知事選で共和党から勝利を奪うには、マリコパ郡で優勢となる必要があるだろう。州都フェニックスを擁するこの郡には、アリゾナ州の登録有権者の半数以上が暮らしている。住民の大半がホワイトカラー層で、ハイテク産業も盛んなこの郡は従来共和党寄りだが、近年は民主党にも票が流れている。
ジョージア州
おさらい
20年にジョージア州で勝利したバイデン氏は、民主党候補として1992年のビル・クリントン氏以来初めてジョージア州の選挙人団の票を獲得した。ジョージア州生まれのジミー・カーター氏が出馬して以降、勝利を手にした民主党候補はこの2回だけだ。
注目ポイント
過去2回の選挙で、ジョージア州は接戦州になりうることが判明した。おそらく今年も変わらないだろう。上院の勢力図がジョージア州の行方にかかっていた20年の状況が、22年も再現される可能性が高い。
前回の選挙では、民主党はジョン・オソフ氏とラファエル・ウォーノック氏が2人とも上院選で勝利したおかげで上院を奪還できた。補欠選挙での勝利だったウォーノック氏は今回新たに6年の完全な任期をかけて、トランプ氏から推薦を受けた元アメフトの花形選手、ハーシェル・ウォーカー氏と議席を争う。ウォーカ―氏はスキャンダルに見舞われながらも、共和党の支持を維持している。
20年の大統領選に関するトランプ氏のうそを退けた共和党のブライアン・ケンプ州知事は、今年の予備選挙でトランプ氏の推薦候補者を下した。18年には民主党のステイシー・エイブラムス氏を5万5000票の僅差(きんさ)で破り、初当選を果たしている。エイブラムス氏が一度も負けを認めないまま2人は再び11月に本選挙で対決するが、今回ケンプ氏はトランプ氏に盾突いた共和党員として出馬することになる。エイブラムス氏が勝利した場合は、全米初の黒人女性知事が誕生する。
ミシガン州
おさらい
トランプ氏は1988年のジョージ・H・W・ブッシュ氏以来初となるミシガン勝利を共和党にもたらしたが、20年にはバイデン氏が奪還した。得票差は15万5000票足らずだった。
注目ポイント
ミシガン中が注目する州知事選は、現職のグレッチェン・ウィットマー州知事(民主党)と、保守派コメンテーターのチューダー・ディクソン氏との戦いだ。ディクソン氏はトランプ氏の推薦を武器に、ミシガン州を再び共和党の手に取り戻したい考えだ。
中絶の権利も投票の対象になっている。民主党はこの問題が自党基盤の投票率を押し上げると期待している。
投票と選挙も重要な問題だ。今回の選挙でミシガン州の有権者は、投票へのアクセスを拡大する措置について投票する他、新たな州務長官を選出する。州務長官選では、現職のジョセリン・ベンソン氏(民主党)と、20年大統領選に関するトランプ氏のうそを支持するクリスティーナ・カラモ氏(共和党)の対決となる。
民主党が引き続きミシガン州を制するには、デトロイト地域の郡で優勢となり、アナーバーやランシングといった民主党寄りの地域で票を積み増す必要があるだろう。
共和党は西部や北部で優勢が予想されていて、伝統的に保守的なグランドラピッズ周辺地域で支持を固めようとするだろう。だが、こうした地域は近年民主党色が強まってきている。
ネバダ州
おさらい
1980年から2012年まで、ネバダ州の勝者は必ず大統領に当選している。その流れは16年にヒラリー・クリントン氏がネバダ州で勝利したときに途絶えたが、20年のバイデン氏で復活した。バイデン氏は全米レベルでは盛り返していたものの、ネバダ州ではクリントン氏よりもさらに僅差での勝利だった。08年以降の大統領選挙は民主党がすべて勝利しているが、共和党との差は回を追うごとに縮まっている。
注目ポイント
ネバダ州は新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)で特に観光業が打撃を受け、回復途上にある。こうした状況の中、現職の民主党キャサリン・コルテス・マスト上院議員とスティーブ・シソラク州知事は同党の現職候補の中でも危うい状態にある。
コルテス・マスト上院議員に挑戦するのは、元州司法長官のアダム・ラクソール氏。18年の州知事選では敗れたものの、14年には司法長官に当選している。一方シソラク氏が迎え撃つのは、ネバダ州最大の郡の保安官を務めるジョー・ロンバード氏。
今回の争点のひとつが民主主義だ。20年の大統領選に懐疑的な共和党のジム・マーチャント氏が州務長官選に名乗りを上げているからだ。
共和党候補は人口の少ない過疎地で優勢なのが通例だ。だが州全体では、民主党寄りのラスベガスやクラーク郡周辺地域で勝ったり負けたりを繰り返している。
ペンシルベニア州
おさらい
20年、バイデン氏はペンシルベニア州を民主党の州に塗り替えた。トランプ氏は16年にかろうじてペンシルベニア州を押さえたものの、それ以前の大統領選では民主党が6回連続で勝利を収めている。
注目ポイント
20年にバイデン氏を勝利に導いたペンシルベニア州は、今年全米でもっとも重要な上院選、州知事選の舞台の一つとなる。
共和党は元TVタレントのメメット・オズ氏を候補に立て、共和党現職が引退する上院議席を保持したい考えだ。一方で州副知事のジョン・フェターマン氏は、型破りな選挙活動で民主党に上院議席を加えたいところ。
ジョシュ・シャピロ州司法長官は、民主党が引き続きペンシルベニア州知事選を制するように奮闘している。州知事は選挙運営の責任者を任命する権利があるため、その重要さが増す。シャピロ氏と争うのは、共和党の州上院議員ダグ・マストリアーノ氏。20年の大統領選を覆そうとしたトランプ氏の試みを支えた中心人物だ。
ペンシルベニア州では民主党基盤がフィラデルフィア都市部とピッツバーグに集中する一方、共和党は州中部の地方で票を稼いでいる。フィラデルフィア郊外は民主党色が強くなっているが、西部や北部では共和党が支持を伸ばしている。
ウィスコンシン州
おさらい
16年にトランプ氏が僅差で勝利したウィスコンシン州を、バイデン氏は20年に得票差1ポイント未満で勝利した。トランプ氏の勝利まで民主党は7回連続で大統領選に勝利していた。
注目ポイント
ウィスコンシン州は全米でも接戦が繰り広げられる州のひとつ。共和党のロン・ジョンソン上院議員と民主党のトニー・エバース州知事は、再選に向けて極めて激しい選挙戦を強いられている。
パンデミックや1月6日連邦議会議事堂襲撃事件に関する発言が物議を呼んだジョンソン議員は、警察の予算削減を支持していたこともある民主党のマンデラ・バーンズ州副知事と争う。
エバース州知事の対抗馬は、共和党の実業家ティム・ミシェルズ氏。予備選挙では20年大統領選挙のうそを熱心に広め、トランプ氏から推薦を取り付けた。
民主党は伝統的に、ブルーカラー層が多いミルウォーキーと州都マディソンで多くの支持を得ている。共和党の支持基盤は富裕層の多いミルウォーキーの北部や西部の郊外と、人口が少ない州中部の郡だ。