(CNN) 過去2年近くにわたり、我々は途方もない進歩を遂げてきた。私の政権が連邦議会の民主党議員と連携して築き上げた経済は、ボトムアップ(貧困層支援による下支え)とミドルアウト(中産階級支援による購買活性化)の施策から成長している。
失業率は3.5%と、50年ぶりの低水準だ。新たに1000万人の雇用を創出し、そのうち約70万人は製造業が占める。私が目を光らせていれば、「メイド・イン・アメリカ」は単なるスローガンではなく、現実となる。
やるべきことはまだある。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)とロシアのプーチン大統領によるウクライナでの戦争で進むインフレは世界的な課題だ。多くの人が仕事を持ちながら、食料品やガソリン、家賃の支払いになお苦しんでいるのは理解している。だからこそ私は、固い決意をもって家計の引き下げに取り組んでいる。
勤労者や中産階級の負担を軽減するべく、彼らが家族のために必要とする日用品のコストダウンに力を入れている。具体的には医療保険の保険料、処方薬やエネルギーの価格などだ。我々が通したインフレ抑制法に共和党議員は1人も賛成票を投じなかった。同法は1300万人の米国人の医療保険料と高齢者向けの処方薬の価格を低く据え置くことを念頭に置いている。
また戦略的石油備蓄の歴史的な放出など、我々の講じた措置が一部奏功し、ガソリン価格は低下している。今夏のピーク時以降1ガロン当たり1.2ドル値下がりし、今週はさらに10セント安くなった。これが積み重なっていけば、家計にとって相当の節約になる。
しかし我々のあらゆる進歩は、危機に瀕(ひん)している。米国民は2つの大きくかけ離れた国のビジョンの間で選択を迫られている。
連邦議会の共和党議員は、大々的なMAGA(トランプ前大統領の掲げるスローガン、<米国を再び偉大に>の頭文字)流のトリクルダウン経済学(富める者がさらに富むことでより広い層にも経済的恩恵が及ぶとする考え方)を強化しているが、これで利益を被るのは富裕層と大企業だ。彼らは自分たちのプランを極めて明確に打ち出した。実現すれば国民のコストが上昇し、インフレは悪化するだろう。
私の政権はようやくメディケア(高齢者および障害者向け公的医療保険)に力を与え、一部の処方薬を対象に価格交渉権を付与した。自己負担で支払う処方薬の価格は、高齢者については年間2000ドルの上限を設けた。また高齢者向けのインスリンの月額上限は35ドルに設定した。大手製薬会社や多数のロビイストたちは数億ドルを投じて、米国民が医療費を節約するのを阻止しようとしたが、失敗に終わった。
共和党議員の多くは、処方薬の価格を引き下げるこれらの施策を撤回するよう求めている。一部の施策は来年1月に発効するが、それが撤回されれば高齢者を対象とした処方薬の2000ドルの価格上限は消えてなくなるということだ。高齢者向けのインスリンの月額上限35ドルも撤廃されるだろう。数百万人の米国民の医療保険料を平均で年間800ドル節約できるはずが、それもご破算になる。共和党議員はこうした日々のコストをつり上げる。
民主党議員の確実な計らいで、国内最大手クラスの企業各社は相応の税の支払いに着手している。2020年、米国の最も裕福な企業55社は連邦所得税を1ドルも支払っていなかった。これからはそうはいかない。私は法人税の最低税率を15%とする法律に署名した。また自身の選挙公約を守り、年収40万ドル未満の家計に対する税の引き上げは一切行わない。
共和党が計画しているのは法人税の最低税率15%の撤廃と、裕福な大企業を対象にした「トランプ減税」の拡大だ。実現すれば10年間で財政赤字が3兆ドル増え、平均で10万ドル以上の減税が上位0.1%の超富裕層のために行われることになる。これらの層の年収は400万ドルを超える。
共和党の計画している減税は富裕層を対象としており、中には社会保障制度や高齢者のためのメディケアの削減を狙っている議員もいる。上院共和党選挙運動部門の責任者を務めるフロリダ州選出のリック・スコット上院議員は、連邦議会で5年ごとに社会保障制度とメディケアを維持、削減、もしくは撤廃するかについての採決を義務付けようと計画している。ウィスコンシン州選出のロン・ジョンソン上院議員が提案した内容によると、社会保障制度とメディケアへの支出は毎年議会での承認を必要とするようになる。
共和党は次のようなことさえ口にした。自分たちが議会を押さえれば債務上限引き上げを拒否し、我が国をデフォルト(債務不履行)に陥らせる可能性もあると。それを避けるには我々が譲歩し、彼らの要求する社会保障制度とメディケアの削減をのむ必要がある。
ここではっきりさせておこう。私が大統領でいる限り、社会保障制度とメディケアは守られる。
我々に必要なのは勤勉な米国民をより暮らしやすくすることであって、彼らの生活を一段と厳しくすることではない。だからこそ私は学生ローンの負担を軽減する行動に踏み切った。パンデミックからの回復途上にある各家庭のためだ。共和党はこの措置を批判したが、私はパンデミックから立ち直ろうとする米国の勤労者と中間層への支援について、謝るつもりなど毛頭ない。とりわけ2兆ドル規模の減税に賛成票を投じた一部の共和党議員に対してはそうだ。それらはおおむね、裕福な米国民と最大手の企業に恩恵をもたらすものだった。
事実はこうだ。ここにいるのはあなた方の父親の時代の共和党ではない。多くの共和党議員は、人工妊娠中絶を全国的に禁止する法案の可決を望んでいる。私なら即座にそれを拒否するし、仮に上院でより多くの民主党議員が当選して下院も過半数を維持するなら、連邦最高裁判所が「ロー対ウェイド事件」の判例で人工妊娠中絶の権利として認めた事項について、来年1月にも法律としての成文化に動くつもりだ。
米国における民主主義の真価が問われている。現在我々が学んでいることを、あらゆる世代が学ばなくてはならない。つまり民主主義に関しては、いかなる保証も存在しないという教訓だ。人々は民主主義を擁護し、守り、選び取らなくてはならない。
私にはその点で絶対的な自信がある。まさに20年がそうだったように、米国民は再び記録的な数の投票によって明確に示すだろう。民主主義こそが我々を米国民として定義し、かつまた結束させる価値なのだということを。
結果の重要性はかつてないほど高まりそうだ。そしてどちらを選ぶべきかは、これ以上ないほど明白だろう。
この数年間、我々は自国の歴史上最も困難な部類の課題に直面してきたが、くじけることはなかった。だから私は我々の未来について、かつてないほどの自信を抱いている。向こう14日間のうちに、米国民は判断を下す。我々が今後も前進を続けるのか、あるいは後退するのかが、そこで決まるだろう。
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ジョー・バイデン氏は米国の大統領。記事の内容は同氏個人の見解です。