米陸軍対空防衛部隊に過労の懸念、ウクライナ含め任務過多で
(CNN) 米軍幹部らは6日までに、ロシア、北朝鮮、中国やイランなど対立状態にある国家をにらんだ24時間態勢の抑止力の維持に努めている米陸軍の対空防衛部隊が、米軍内で最も働き過ぎの状態に陥っていることを明らかにした。
同部隊の出番はウクライナでの戦争や他の差し迫りつつある国際情勢上の問題もあって積み重なっており、ミサイル防衛部隊の戦力派遣が拡散し過ぎて、機能不全ともなりかねないとの危惧も出ている。
任務過多が深刻なことを受け米陸軍は2020年、対空防衛部隊の兵士や家族を対象に調査を実施。最近になってこれら兵士や家族が感じ取っている心理的な負担の一部を緩和させるための措置も打ち出していた。
陸軍は地対空ミサイル「パトリオット」の運用要員など一部の対空防衛部隊の軍務への志願者をより多く募るため4万7500ドル(約684万円)の入隊ボーナス金も準備したという。パトリオットはウクライナへも供与されている。
また、世界各地に展開する同隊に精神衛生の専門家を帯同させることも決め、兵士を襲う極度の疲労感を減少させるための気配りも見せた。
米陸軍の中で最も頻繁に出動命令が下されるのは対空防衛部隊とされ、同部隊の全兵力のうちの約6割が常時、任地に赴いているのが現状だという。平均すると、1年間の出動任務を終えた部隊が米国に戻った後の滞在期間は1年以下ともされている。
欧州に駐留する同部隊はロシアによるウクライナ侵略以降、時には数時間の余裕しかない出動命令に従い、北大西洋条約機構(NATO)の東方圏の防御やウクライナ軍兵士の訓練支援の任務をこなしてもいた。
一方、太平洋方面を見た場合、米軍は中国との潜在的な衝突の可能性をにらみながら戦力整備などを強化している。中東地域で現在見せつける軍事的な存在感を保ちながらの対応だが、米国防総省が中東で一部の軍事的関与の役割を縮小する姿勢をみせる中での措置ともなっている。
米陸軍の対空防衛部隊の幹部はCNNの取材に「我々は過労状態にあり、人員不足にもある」と認めた。
ウクライナの戦場では、同国軍が強力な防空態勢を築く必要性が最近、浮き彫りになった。ウクライナ軍はロシア軍の激しい攻撃をかわすことに尽力しており、首都キーウを先に襲ったイラン製のドローン(無人機)「シャヘド」の全てを撃墜したとの戦果も誇示していた。
パトリオットの発射を担当する米軍の曹長は、米オクラホマ州の基地でウクライナ軍兵士を指導した後、欧州での訓練も引き続き仕切る役目を担った。陸軍在籍が23年だという曹長は「これまで見たこともないような訓練だった」と振り返った。
訓練生のウクライナ軍兵士の年齢や兵役体験のばらつきが余りにも大きく、米軍が全てを教え込もうとした訓練が実戦などで大きな成果に実際につながり得るのかどうかが問われたと振り返った。
この曹長は最後に、米軍の教官役は「我々は彼らを前線へ送る前には自分たちがやってきたことが十分だったはずと祈った」とも述べた。