共和党の第1回候補者討論会、7つのポイント

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トランプ氏が欠席した共和党の候補者討論会で、参加者が激しい論戦を繰り広げた/Win McNamee/Getty Images

トランプ氏が欠席した共和党の候補者討論会で、参加者が激しい論戦を繰り広げた/Win McNamee/Getty Images

(CNN) 2024年米大統領選の共和党候補指名争いに参戦する候補者らが23日夜、ウィスコンシン州ミルウォーキーで開かれた第1回討論会に臨んだ。支持率争いでトップに立つトランプ前大統領が欠席する中、参加者の多くは同氏が普段身に着けているのと似た真っ赤なネクタイを締め、支持率2位の座を目指して激論を戦わせた。

今回初めて候補者となった38歳の起業家、ビベック・ラマスワミ氏は、フロリダ州のデサンティス知事と並んでステージの中央に陣取ると、討論会の中心人物としてこの夜の大半を過ごした。ペンス前副大統領とは経験を巡り議論、前サウスカロライナ州知事のニッキ・ヘイリー氏とは外交政策で、前ニュージャージー州知事のクリス・クリスティー氏とはトランプ氏に関して論戦を繰り広げた。

トランプ氏の不在により、同氏に批判的な複数の候補者にとっては本人との直接対決の機会が失われた形となった。そうした候補者の一人、クリスティー氏はラマスワミ氏との応酬により多くの時間を割いた。ラマスワミ氏はクリスティー氏の選挙活動について、トランプ氏に対する「復讐(ふくしゅう)と怒りが根底にある」と指摘した。アーカンソー州のエイサ・ハッチンソン前知事は討論中、存在を感じさせない時間が長く続いた。

一方、ノースダコタ州のダグ・バーガム知事の場合、同日の最も重要な成果は討論会に参加できたことそのものだった。同氏は前日アキレス腱(けん)を負傷し、ミルウォーキー市内にある緊急治療室に運び込まれていた。

会場には約4000人の聴衆が詰めかけ、ステージ上の議論に大声で反応。トランプ氏への批判に対する嘲笑やブーイングも飛び交い、FOXニュースの司会者の声は時折かき消された。

以下、討論会で浮かび上がった7つのポイントを挙げる。

ラマスワミ氏を狙い撃ち

トランプ氏不在の討論会で、参加者のほとんどが標的としたのは政界へ新たに進出したラマスワミ氏だった。まずはペンス氏がラマスワミ氏の最近の発言に言及。「大統領とはいえ何でもできるわけではない」との発言に対し、「米国大統領は、国が直面するあらゆる危機に立ち向かわなければならない」と反論した。

別の場面でラマスワミ氏は「我々は国家としてアイデンティティーの危機の渦中にいる」と主張したが、ペンス氏はそうした見方も否定。ラマスワミ氏と異なり「危機は存在しない。我々は新たな国家のアイデンティティーを探していない」と語った。

政界の新参者であるラマスワミ氏に攻撃が集中したのは予想外だった。ただ最近の世論調査によれば、同氏は他の候補者を上回る支持率を獲得している。その中には選挙政治で数十年のキャリアを持つベテランもいる。ラマスワミ氏の対立候補にとって、同氏の持つ勢いを弱めることは非常に重要になる。

デサンティス氏は目立たず

当初の予想ではデサンティス氏が討論会の中心を占めるとみられていたが、全くそうはならなかった。

発言の機会も候補者の中で最多ではなかった。陣営は対立候補がデサンティス氏に「牙をむく」ものと示唆していたが、実際に受けた攻撃は多くない。重要だったのは、トランプ氏に関する質問が出た場面だ。候補者らに対し、裁判で有罪になってもトランプ氏を支持する場合は手を挙げるよう告げられると、デサンティス氏はステージ上を盗み見て、他の候補者の反応を確認した後、気乗りしない様子で右手を挙げた。

デサンティス氏の発言はおおむね、過去数カ月間の演説の内容をなぞるものだった。討論の開始に当たっては、「我が国は衰退している」「ジョー・バイデンを地下に送り返さなくてはならない」と宣言したが、これも選挙遊説で口にする文言そのままだった。

デサンティス氏は冷淡で堅苦しい論客という評価を払拭(ふっしょく)するべく、力強い口調で語った。自宅で討論会を視聴する米国民に直接訴えかけるため、しばしばカメラを真っ直ぐ指差して見せた。自身の軍役や家族についても再三触れたが、それにより自らの人となりがまだ有権者に周知されていない可能性があることを認めた形となった。

クリスティー氏の攻撃は空振り

有罪判決が出てもトランプ氏を支持するかと問われたクリスティー氏は、共和党として「このような振る舞いが常態化する」のを止める必要があると回答。これに対して聴衆からはブーイングが起こった。

ここでラマスワミ氏がクリスティー氏に向かって、「あなたはドナルド・トランプの活動の動機が復讐と怒りにあると主張する。あなたの選挙運動の一切が1人の男に対する復讐と怒りに根差したものでないのなら、その主張も格段に説得力を持つのだが」と指摘した。相手の以前の発言に絡めて論敵を攻撃するのが得意なクリスティー氏に対し、ラマスワミ氏がそのお株を奪う格好となった。

討論に先立ち、クリスティー氏の陣営の上級顧問はCNNの取材に答え、トランプ氏の擁護に回る論敵との対決に自信を示していた。しかし、トランプ氏を強く擁護するラマスワミ氏をステージ上で攻撃しようとしたクリスティー氏に対し、聴衆はより辛辣(しんらつ)な反応を浴びせていた。

人工妊娠中絶巡る相違点

人工妊娠中絶については、15週以降の中絶の全米での禁止を支持する候補者もいれば、全米規模の禁止に反対する候補者もいた。ただ妊娠6週より後の中絶の全米禁止を明確に支持する候補者は一人もいなかった。デサンティス氏とバーガム氏は、6週以降の中絶禁止の法律を知事の立場で承認している。

中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド判決」を最高裁が覆して1年以上経過したが、人工妊娠中絶を巡る政策は依然として共和党の候補者にとって厄介な争点だ。彼らは反中絶の姿勢をアピールする必要に迫られると同時に、政治的展望の現実にも対処しなくてはならない。現状、有権者は中絶にまつわる厳格な規制及びそれを支持する候補者を拒絶している。

デサンティス氏、議事堂襲撃事件の質問回避に失敗

20年の大統領選に関して、選挙結果を覆すよう迫ったトランプ氏の圧力を退けたペンス氏は正しかったかと尋ねられたデサンティス氏は、質問をかわそうと試みた。具体的には質問内容を無視し、連邦政府の「武器化」に対する不満を口にした。

しかしここにペンス氏が食いつき、デサンティス氏を窮地に追い込んだ。

ペンス氏は、大統領選の結果を承認することはこれ以上ないほど重要な職務だと指摘。当時の自分の行動が憲法への宣誓を守るものだったのかどうか答えるようデサンティス氏に迫った。

これを受けデサンティス氏は「マイク(ペンス氏)は自分の職務を果たした。彼に不満はない」と答え、早急に話題を変えようとした。

同氏がトランプ氏の支持基盤を遠ざけることに対し、いかに神経をとがらせているかが浮き彫りになった瞬間だった。

ヘイリー氏の気持ちは本選に

トランプ政権で国連大使を務めたヘイリー氏がステージ上で打ち出したメッセージは、共和党の指名争いよりも大統領選の本選に直接照準を合わせた内容だった。

ただ自身が共和党の有権者に十分な印象を与え、実際に本選に進めるのかどうかはそこまで判然としていない。

ヘイリー氏は中絶の全米での禁止に消極的な姿勢を示し、上院でフィリバスター(議事妨害)の回避に必要な60票と下院過半数が必要となる現実を踏まえると、この点では「意見の一致」が必要になると発言。また、全ての女性が避妊できるようにするべきだとも語った。

気候変動が実際に起きていると認めた数少ない候補者の一人でもあった。

トランプ氏に対する名指しでの批判も、ヘイリー氏が口火を切った。同氏は20年大統領選の結果を承認したペンス氏を称賛する一方、トランプ氏を「米国で最も嫌われている政治家」と形容。「あのやり方では本選で勝利できない」と訴えた。

一方、ロシアに関する議論ではラマスワミ氏を痛烈に非難しつつ、米国によるウクライナ支援を擁護した。

「あなたには外交経験が全くない。それが表に出ている」。この夜の最も盛り上がった部類のやり取りで、ヘイリー氏はそう言い放った。

スコット氏は好感度の維持にこだわる

ティム・スコット氏が討論会に入る際に実行したプランは、「善意によって相手を仕留める」というものだった。討論の冒頭からその手法を取った。問題は、その結果大半の議論で蚊帳の外に置かれたことだった。

他の候補者が様々なテーマで議論を繰り広げる中、スコット氏が本格的に論戦に加わることはなかった。

メキシコとの国境や不法移民、薬物問題について発言する機会を得た際、スコット氏はトランプ氏が建設に着手した国境の壁を完成させることがいかに重要かつ容易であるかについて、長々と語った。

「次の米国大統領として、私はあの国境の壁を完成させる」。そう結論を述べて間を置いたスコット氏だったが、聴衆からの喝采はなかった。

スコット氏が今後も同様の手法で討論に臨むかどうかは疑問の余地がありそうだ。

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