自宅で流産の女性、「死体虐待」罪で起訴 全米で中絶規制厳格化
(CNN) 米オハイオ州で、胎児は生存できないと診断されて自宅のトイレで流産した女性が、「死体虐待」の罪に問われている。弁護士がCNNに明らかにした。
同州トランブル郡の裁判所の記録によると、オハイオ州ウォレンに住むブリタニー・ワッツさん(33)は、死体損壊の重罪で訴追された。
トレイシ・ティムコ弁護士は電子メールでCNNの取材に応じ、「ワッツさんは自身の生命を脅かす悲しく危険な流産に苦しんだ。それなのに体と心をいやすことに専念するどころか、重罪で逮捕・起訴された」と訴えた。
この事件はトランブル郡の陪審による審理が予定されているという。
検視官の報告書によると、胎児は生存できない状態で、子宮内で死亡していたと判断された。しかしワッツさんの事件は、人工妊娠中絶であれ流産であれ、妊娠が終わった女性が罪に問われかねない現実を見せつけた。
人工妊娠中絶の権利を認めた「ロー対ウェイド」判決を覆した昨年の米最高裁の判断を受け、米国では中絶制限や禁止の法律を制定する州が相次いだ。
その結果、医療側が罪に問われることを恐れ、胎児に異常が見つかった場合や、妊婦の生命が脅かされる場合でも、中絶が受けられない女性がいる。
検察側は、流産した後のワッツさんの行為が問題だったと主張する。地元メディアのWKBNによると、検察側は先月の予備審問で、「問題は子どもが死亡した経緯やいつ死亡したかではない。赤ん坊がトイレに放置され、被告がそのまま日常生活を続けたことだ」と述べていた。
トランブル郡検視局の報告書によると、ワッツさんは不正出血のため、4日間で3回通院していた。
報告書によれば、最初の通院は9月19日。胎児は心拍は確認されたが、生存能力はないと判断され、医師は分娩(ぶんべん)誘発を勧めた。
この時点でワッツさんは妊娠21週と5日目だった。オハイオ州では、胎児が生存可能になるまで(一般的には22~24週前後)は中絶が認められている。その後は患者の生命や健康が危険にさらされない限り、州が中絶を制限できる。
ワッツさんはこの日、医師の勧告に従わずに病院を出たが、翌20日も同じ症状で同病院を受診した。
ワシントン・ポスト紙によると、ワッツさんはこの日、分娩誘発を受けるつもりだったとされる。しかし医師らは早産期前期破水(PPROM)と診断された女性に対する分娩誘発について、何時間も検討した。ワッツさんは最終的に、そのまま帰宅した。
同月22日、ワッツさんは再び病院を受診した。検視局の報告書によれば、この日午前5時58分ごろ、自宅のトイレで出産したと告げたという。
病院側はウォレン警察に通報し、警察がワッツさんの自宅を訪れた。
検視局の報告書によると、ワッツさんは警察に対し、胎児の遺体はトイレから出して黒いバケツに入れ、その後裏庭のガレージ近くに置いたと説明した。
検視局の捜査官は、ガレージ横の雑草付近から山積みのティッシュや血、ペーパータオルのようなものを確認した。
現場を捜索した警察は、階下のトイレが血だらけになっているのを発見。トイレをのぞくと、水や血液、血塊、組織でいっぱいの状態だった。
便器の中には「小さな足のようなもの」が見つかったと捜査報告書は指摘。その後警察が便器を解体して胎児の遺体を収容したとしている。
検視の結果、胎児は早期破水による羊水の減少により、子宮内で死亡していたことが分かった。
オハイオ州の「死体虐待」の定義はある意味主観的で、「家族の感情を害するような形で人間の死体を扱ってはならない」などと定めている。
しかしワッツさんの弁護を担当するティムコ弁護士によれば、同州で流産した女性に対して遺体の埋葬や火葬を義務付ける法律はない。「女性がトイレで流産するのはよくあることだ」と同弁護士は主張、ワッツさんの起訴は不当だと訴えている。