トランプ氏「口止め料」裁判で最終弁論 五つのポイント

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公判に姿を現したトランプ氏/Spencer Platt/Pool/Getty Images via CNN Newsource

公判に姿を現したトランプ氏/Spencer Platt/Pool/Getty Images via CNN Newsource

(CNN) トランプ前米大統領が元不倫相手に支払った「口止め料」を不正に処理した罪に問われている裁判は28日、ニューヨーク州地裁で最終弁論が行われ、結審した。

検察側は陪審員に向かって、トランプ氏の有罪を証明する「証拠の山」が示されたと主張した。これに対して弁護側は、検察側の議論が全面的にトランプ氏の元顧問弁護士、マイケル・コーエン氏の証言に依存していると批判し、コーエン氏はトランプ氏の追い落としを狙ううそつきだと断じた。

トランプ氏はかつて不倫関係にあったとされるポルノ女優、ストーミー・ダニエルズ氏に多額の「口止め料」を支払い、それを隠蔽(いんぺい)するために業務記録を改ざんしたとして、虚偽記載の重罪34件に問われている。

28日の法廷では、弁護側と検察側の応酬が夜遅くまで続いた。29日には陪審員の評議に移る。トランプ氏の命運は、陪審員がどちらの主張を信じるかにかかっている。

以下、最終弁論のポイントを五つの項目にまとめた。

弁護側は「コーエン氏の証言だけで有罪にはできない」と主張

最終弁論の冒頭では、トッド・ブランチ弁護士が2時間にわたり、コーエン氏には信用性がないとの主張を展開した。

ブランチ氏は、コーエン氏がかつて議会での偽証で有罪となったうえ、陪審員に対しても直接うそをついた人物だと述べて、「うそつきの最優秀選手」「史上最大のうそつき」だと力説した。

例として、コーエン氏が2016年10月、トランプ氏のボディーガードを介して同氏と電話で話し、ダニエルズ氏への送金を実行することを告げたとした証言を挙げた。

ブランチ氏は先日、コーエン氏への反対尋問で、ボディーガードとの電話が実際は自身へのいたずら電話に関する内容だったとの見方を示していた。最終弁論でも同じ見解を繰り返し、「これは偽証だ」と強調した。

同氏はさらに、検察側はトランプ氏がダニエルズ氏への支払いを承知していたというが、コーエン氏の証言以外に証拠を示していないと主張。承知していたと結論付けるにはコーエン氏の言葉を信じるしかないが、「かれの言葉は信じられない」と述べた。

コーエン氏は法廷で宣誓しておきながら繰り返しうそをついたと非難し、陪審員らに「皆さんがコーエン氏の言葉に基づいて、だれかを刑務所へ送ることはできない」と訴えた。

刑務所についての発言には検察側が異議を唱え、マーシャン判事も量刑は陪審が決めることではないと注意した。

検察側はコーエン氏を擁護、十分な裏付けを主張

ブランチ氏の追及に対して、ジョシュア・スタイングラス地方検事補は、コーエン氏の証言を裏付ける文書や証言は十分にあると反論。タブロイド紙「ナショナル・エンクワイアラー」の親会社「アメリカン・メディア・インク(AMI)」の会長だったデビッド・ペッカー氏の証言を例に挙げた。

検察が証人としてコーエン氏を選んできたわけではなく、被告のトランプ氏が自分のためにうそをつき、不正を働く「フィクサー」として同氏を選んだのだとも主張した。

16年10月の通話については、電話をかけるコーエン氏の役になって、ボディーガードにいたずら電話の件を話した後、トランプ氏に代わってくれと頼み、支払いの件を伝えるという流れを演じてみせた。

話は全部で49秒だったが実際の通話は1分36秒続いたと指摘し、コーエン氏とトランプ氏の間柄なら手短な会話で済んだはずだと強調した。

またコーエン氏の信用性を裏付ける事実として、ペッカー氏が16年6月、トランプ氏との不倫関係を告白したもう1人の女性、元モデルのカレン・マクドゥーガル氏に関する記事のもみ消しをめぐり、トランプ氏と電話で話したとの証言が、コーエン氏の説明と一致していることを指摘。この電話はコーエン氏が独断で行動していたとする弁護側の主張に反し、トランプ氏自身が関与したことを示す強力な証拠になると述べた。

検察側は5時間近くかけて公判を総ざらえ

スタイングラス氏は陪審員らを前に4時間41分を費やし、6週間に及ぶ審理の中で示された証拠や証言をすべて振り返りながら、トランプ氏を頂点とした隠蔽(いんぺい)工作の構図を浮き彫りにした。

同氏は、ペッカー氏が15年に陣営の「目と耳」になり、トランプ氏にとって不利な話題を監視することに同意した時から、同氏とトランプ氏、コーエン氏の共謀が始まったと指摘。

この時点以降、コーエン氏が18年に連邦当局の捜査に協力し始める前、トランプ氏が同氏に圧力をかけた時点までの経緯を詳細にたどった。

弁護側は一貫して「合理的な疑い」論法

これに対してブランチ氏は終始、トランプ氏を有罪とするには合理的な疑いが残ると訴え続けた。最後の結びには、陪審員が合理的な疑いを差しはさむべき理由を10点挙げて、無罪の評決を促した。

例えば、コーエン氏が肩代わりした口止め料の払い戻しとされる支払いが「弁護士費用」と記載された明細について、コーエン氏はトランプ氏の弁護士だったのでうそではないとし、トランプ氏に不正処理の意図はなく、明細が送られたことを知っていた証拠もないとの主張を展開した。

また、トランプ氏が隠蔽を図ったり別の犯罪を重ねようとしたりした事実はなく、重罪には相当しないとも主張。16年大統領選に影響を与えようとする合意は断じてなかったと改めて強調した。

さらに冒頭の「コーエン氏はうそつき」説に立ち返り、同氏は「合理的疑いの権化」だと言い放った。「かれは皆さんにうそをつき続けた。皆さんと出会う前から何度もうそを重ねていた」「偏った考えを持ち、真実でないことを自ら進んで語る人物だ」と繰り返した。

判断は陪審員の手に

28日の結審を受けて、29日には男性7人、女性5人の陪審員による評議が始まる。

陪審員は午前10時に集合し、マーシャン氏から法律上の論点などについて説示を受ける。補欠要員も裁判所内の別室に集合する。

トランプ氏と検察、弁護の双方は、陪審員からの連絡に備えて近くで待機するよう義務付けられる。報道陣も評決に向けて、法廷に控えることになる。

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