(CNN) 米国のカマラ・ハリス副大統領は、選挙戦からの撤退を決める前のジョー・バイデン大統領よりも、有色人種や若年層の有権者を引き付けているようだ。それでも、前回の2020年大統領選の結果からは、ハリス氏がドナルド・トランプ前大統領との対決で、こうしたグループでの差をさらに広げることができる可能性が見て取れる。
新たに発表されたCNNとSSRSによる世論調査の結果によれば、ハリス氏は黒人の有権者からの支持で、78%対15%とトランプ氏をリードしている。同じ有権者の間で(世論調査では同じ回答者に再び連絡を取った)、バイデン氏のリードは70%対23%とより小さかった。この数字はCNNが集計した4月と6月のデータに基づく。
ヒスパニック系の有権者の間でも、程度こそより小さいものの、同様の傾向が見て取れる。ハリス氏とトランプ氏とではヒスパニック系の有権者の支持は47%対45%。同じ回答者の4月と6月の支持はトランプ氏が50%、バイデン氏が41%だった。
35歳未満の有権者にも同様の変化がみられる。現在の支持率はハリス氏が47%、トランプ氏が43%。4月と6月は、トランプ氏の支持が49%とバイデン氏の42%を上回っていた。
ある意味で、これらの変化はいずれも、それほど驚くべきものではない。バイデン氏への支持は伝統的に民主党寄りのグループの中では今世紀の民主党員として最悪の水準だった。実際のところ、ヒスパニック系と黒人の有権者の間でのバイデン氏の支持は民主党員としては過去50年あまりで最悪の水準だった。
ハリス氏にとってはおそらく、こうした有権者のグループからの支持は上がる以外になかったのかもしれない。
改善したとはいえ、ハリス氏にとって今回の結果は物足りないものだろう。ハリス氏は20年の最後の世論調査において、同じグループの中でバイデン氏より少なくとも5ポイント支持が低い。
黒人の有権者の支持は20年の選挙戦終了時点で、バイデン氏が84%と、トランプ氏の9%を上回っていた。さらに注目すべきは、ヒスパニック系の有権者からの支持は、58%対32%の差でバイデン氏がリードしていた。
最後に、ハリス氏は若い有権者の間で人気のミーム(人々が模倣する動画や画像)となっているが、20年の選挙終了時の60%対31%というバイデン氏の優位は、現在のハリス氏の状況よりもはるかに大きなものだった。
(20年の選挙時のこの時点での世論調査は選挙戦終盤の世論調査と似ていたことに留意すべきだろう)
これはハリス陣営にとって悪いニュースのように聞こえるかもしれないし、ある意味では確かにその通りだ。これらのグループの間で支持が伸びなければ、ハリス氏はトランプ氏に勝つことはできないだろう。
ハリス氏にとっての朗報は、今年初めのバイデン氏の支持と比べて、こうしたグループでいくらか立て直すことができそうだと示されていることだ。
ハリス氏は、バイデン氏の副大統領という立場から離れて自身を定義し続けており、有色人種や若年層の有権者をもっと引き付けるような独自の政治的な立ち位置を確立できる可能性は十分にある。
ハリス氏の支持が有色人種の間でバイデン氏を上回っているという事実は、選挙人の獲得でより多くの道を切り開く機会を与えている。
バイデン氏が過半数となる270人の選挙人を獲得するための道筋はかなり限られていたようだった。北部の激戦州で全勝し、ミシガンとペンシルベニア、ウィスコンシンの各州と、ネブラスカ州の第2選挙区をおさえる必要があっただろう。南部の「サンベルト(太陽光地帯)」のアリゾナ、ジョージア、ネバダ、ノースカロライナ各州での支持は低かった。
もしバイデン氏が北部の激戦州と(前述のサンベルトを除く)民主党寄りの州で勝利していれば、当選に必要な270人の票をぴったり獲得していただろう。
バイデン氏がこれらのサンベルトで苦戦した大きな理由は、各州では黒人またはヒスパニック系の有権者がかなりの割合を占めていたためだ。ハリス氏はこうした層でより良い結果を出すことで、より幅広い道を切り開けるかもしれない。
例えば、もしハリス氏が前述のサンベルトの4州全てで勝利した場合、ミシガンやペンシルベニア、ウィスコンシンで勝利する必要はない。
おそらくもっと可能性が高いのは、ハリス氏が北部の激戦州とサンベルトの激戦州の一部で勝利することで270人の選挙人を獲得できるというものだ。
結局のところ、直近のCNNの世論調査はハリス陣営にいくばくかの希望を与えている。トランプ氏が支持されていないとか、ハリス氏が厳しい戦いに直面していないというわけではない。
むしろ、ハリス氏には今や勝利への道が複数ある一方、バイデン氏の選択肢は急激に閉ざされつつあったようだったということだ。
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本稿はCNNのハリー・エンテン記者の分析記事です。