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トランプ政権に仕えた多数の米軍幹部、再選に警鐘 

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トランプ氏の質疑応答に耳を傾けるマティス米国防長官(当時)=2018年10月/Win McNamee/Getty Images/File

トランプ氏の質疑応答に耳を傾けるマティス米国防長官(当時)=2018年10月/Win McNamee/Getty Images/File

(CNN) 共和党の大統領候補であるトランプ前大統領が選挙当日に「内なる敵」に対処するため米軍を使うべきだと示唆したことで、トランプ氏が再選され、最高司令官になった場合、米軍に要求する可能性のあることについての懸念が再燃した。

そして、トランプ氏について最も明確に警鐘を鳴らしたのは、トランプ氏に仕えた軍幹部らだ。

マーク・ミリー元統合参謀本部議長は、ジャーナリストのボブ・ウッドワード氏の新著「戦争」の中で、トランプ氏は「この国にとって最も危険な人物だ。根っからのファシストだ」と語った。

17日に公開されたザ・ブルワークのポッドキャストでウッドワード氏は、トランプ政権で国防長官を務めたジェームズ・マティス氏から受け取ったトランプ氏に関する電子メールについて触れた。メールにはミリー氏がウッドワード氏に伝えた評価に同意すると書かれていたという。メールの主旨は「脅威は大きいので、脅威を軽視しないようにしよう」というものだった。

トランプ氏は長きにわたり、軍に対して少年のような関心を抱いており、第2次世界大戦のジョージ・パットン将軍とダグラス・マッカーサー将軍を崇拝していた。10代の頃はニューヨークにある軍隊式の寄宿学校での生活を楽しんだ。

そうした関心にもかかわらず、トランプ氏はベトナム戦争への従軍を避けるため、何度も徴兵延期を申請した。

大統領に就任すると、トランプ氏は有力な将官らを入閣させた。国防総省のトップには退役した四つ星将軍のマティス氏を任命し、同じく退役した四つ星将軍のジョン・ケリー氏を首席補佐官に任命した。大統領補佐官(国家安全保障担当)は三つ星将軍のマイケル・フリン氏とハーバート・マクマスター氏だった。

トランプ氏は軍の壮観さと儀式を愛しており、在任中、ワシントンでロシア式の大規模なパレードを開催するよう働きかけた。結局、パレードは実現しなかった。

トランプ氏は軍と友好的であるものの、退役した軍幹部らはトランプ氏を好まなかった。本当の「内なる敵」はトランプ氏だと考えている人物さえいるようだ。

マティス氏は4年前、アトランティック誌に「ドナルド・トランプは私の生涯で初めての、米国民を団結させようとしない大統領だ。団結させようとするふりさえしない。むしろ我々を分断しようとしている」と声明を出した。

同様にケリー氏は昨年、CNNに、トランプ氏は「我々の民主主義制度、憲法、法の支配を侮辱するだけの人物だ」と語った。

マクマスター氏は、トランプ政権で働いていた頃の回想録「At War with Ourselves(原題)」で、トランプ氏が2020年の選挙で敗れた後、同氏の「エゴと自己愛が大統領の最高の義務である『憲法を支持し擁護する』という誓いを放棄させた」と述べている。

11年にオサマ・ビンラディン容疑者殺害を担った統合特殊作戦コマンドを変革したスタンリー・マクリスタル氏は3週間前、ニューヨーク・タイムズ紙に寄稿。ハリス副大統領に投票するのはハリス氏の「人格」のためだと述べている。寄稿文にはトランプ氏に対する評価は記されていないが、同氏はトランプについて「不道徳」で「不誠実」だと発言したことがある。

ビンラディン作戦を率いたウィリアム・マクレイブン大将は20年、ワシントン・ポスト紙にトランプ氏について寄稿。「大統領のエゴと保身が国家の安全保障よりも重視されると、悪の勝利を阻止するものは何も残らない」と述べた。

マイク・マレン元統合参謀本部議長は20年6月初め、アトランティック誌に、警察によるジョージ・フロイドさん殺害に抗議していた平和的なデモ参加者が「強制的かつ暴力的に」ホワイトハウス周辺から排除されるのを見て「うんざり」したと記した。

これほど多くの軍幹部から非難を浴びた米国大統領は他に思い浮かばない。

だからといって「トランプ氏の」将官たちの中にファンがいないわけではない。トランプ氏の在任中、筆者が勤務する研究機関ニュー・アメリカは、退役および現役の三つ星以上の将官によるトランプ支持と不支持の公式声明をまとめた。その結果、トランプ氏を批判した将官は支持者の約5倍にあたる255人で、トランプ政権を支持する将官は54人だった。

トランプ氏のファンの1人は、ペンス前副大統領の国家安全保障担当補佐官を務めたキース・ケロッグ氏だ。ウッドワード氏の新著には、今年初めにイスラエルのネタニヤフ首相と「秘密裏に」会談したケロッグ氏が登場している。ケロッグ氏は訪問後、トランプ氏に「彼らは停戦に応じるつもりはない」と伝えた。

ケロッグ氏はトランプ政権下で辞任せず、更迭もされなかった数少ない上級補佐官のひとりだ。トランプ氏への長年の忠誠を考えると、同氏が11月に勝利すれば、ケロッグ氏は何らかの上級職に復帰する可能性が高い。

トランプ氏が選挙に勝った場合、来年1月20日まで最高司令官にはなれないため、同氏がFOXニュースに示唆したように、選挙日に米軍に何かを命じることはできない。しかし、トランプ氏が再選された場合、従順な国防長官を従えて最高司令官になれば、望むことをほぼ何でも国防総省に命令できる。トランプ氏に仕えた軍幹部らは、それを厄介な見通しだという。

本稿はCNNのピーター・バーゲン氏による分析記事です。

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