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米大統領選、郵便投票による逆転は今年も起きるのか

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米大統領選の期日前投票所で列に並ぶ有権者/Jim WATSON / AFP via Getty Images

米大統領選の期日前投票所で列に並ぶ有権者/Jim WATSON / AFP via Getty Images

(CNN) それは「赤い蜃気楼(しんきろう)」、もしくは「ブルーシフト」と呼ばれている。

最近の米大統領選で発生した現象で、序盤明らかにリードしていた共和党候補が、選挙当日夜の投票締め切り後、続く郵便投票の集計によってその優位を失う事態を指す。当日の夜に起きる場合もあれば、投票日から数日後に起きる場合もある。

共和党候補のトランプ前大統領はかねてこの「赤い蜃気楼」に言及し、根拠の無い選挙不正の主張を自ら展開する際の裏付けとしてきた。実際のところ、この現象は郵便票の増加に応じて発生する。郵便票集計のタイミングにまつわる往々にして奇妙なルールも一因となっている。

2020年に起こったこと

2020年11月3日、大統領選が行われたその夜、大半の米国人が床に就いた時点で最終的な結果は全く明らかになっていなかった。

当時のトランプ大統領とバイデン現大統領による争いは、激戦州において依然として決着には程遠い状況だった。この時の激戦州はアリゾナ、ノースカロライナ、ネバダ、ウィスコンシン、ミシガン、メーン、ジョージア、ペンシルベニアの各州だ。

その後数日にわたり、これらの州では票集計を見守る劇的な時間が流れた。ジョージア州でのバイデン氏のリードが票集計に反映されたのは、11月6日の未明になってからだった。少量の票の束が複数集計に回り、大接戦の行方を左右した。

CNNがバイデン氏勝利の見通しを報じることができたのは投票日から4日後の11月7日だったが、集計は続いていた。マサチューセッツ工科大学の研究者らによる分析から、バイデン氏が勝った郡の集計は平均してトランプ氏が勝った郡よりも時間がかかったことが分かった。

16年大統領選でも「ブルーシフト」は起きていたが、決定的ではなかった。CNNのマーシャル・コーエン記者が記したように、当時の民主党候補、ヒラリー・クリントン氏が敗北を認めたとき、同氏はまだ一般投票でリードを許していた。その後の票の積み上げは同氏の当選にこそつながらなかったものの、一般投票で数百万票差をつけて上回るのには十分だった。

20年の票集計に最も時間がかかったカリフォルニア州などの州は民主党の強固な地盤で、州内の全登録有権者に郵便投票の用紙が送付される。つまり、一般投票での「ブルーシフト」は依然として起こる余地があるということだ。たとえそれによって大統領選の結果判明が遅れることはないとしても。

CNNのようなニュース局は勝者の見通しが明らかになった時点で勝利予測を出す場合もあるが、選挙戦の結果はもっと後にならなければ公式には承認されない。この点を頭に入れておくのが重要だ。承認の締め切りは州によって異なるが、どの州も再集計の必要がある場合には24年12月11日までに完了する必要がある。大統領選の結果にまつわる論争も、その期日までに決着させなくてはならない。

今年はどのくらいの時間がかかるのか?

一部の重要な州では、集計が前回より早く進むとの見方も出ている。

ジョージア州では、新たに成立した選挙関連の法律により、期日前投票を行う人々が郵便投票を上回る見通し。これは郵便投票の集計作業を早める可能性がある。ノースカロライナ州は前回と異なり、大統領選当日以降に届く郵便投票を受け付けない。

選挙関連の法律を追跡するブレナン・センター・フォー・ジャスティスは、潜在的な問題点についての概略を発表している。

ジョージア州のラフェンスパーガー州務長官(共和党)は、最近CBSの取材に対し、大多数の票が投票所を閉じてから数時間で処理、集計されるとの見通しを示した。

ラフェンスパーガー氏によれば、全ての期日前投票と当日早めに投じられた票の全ては午後8時までに結果が報じられるはずだという。その場合、全投票の70%もしくは75%が選挙当日の午後8時を過ぎない時点で報じられることになる。しかし仮にジョージア州での選挙が20年同様の接戦にもつれ込めば、その時刻になっても結果が明らかにならない可能性もある。

ラフェンスパーガー氏は、ジョージア州での勝者が決するのに1週間かかることもあり得るかと問われた。

同氏は「絶対にない」と回答。「我々が待つことになるのは、8日までに届く在外投票だ。つまり、それらが最後の票数となる。後はそれらが総投票数に違いをもたらすかどうか確認するだけだ」と述べた。

ペンシルベニアやウィスコンシンといった激戦州をはじめとする他の州では、選挙当局者が大統領選当日より前に票を処理することが一切認められていない。しかし集計はこれらの州でも前回より迅速に進められそうだ。新型コロナのパンデミック(世界的大流行)に見舞われた20年大統領選と比較して関係者は経験を積んでおり、扱う票の数も少なくなっているからだ。選挙の信頼性構築に取り組む非営利団体CEIRは、郵便投票を処理する上でのさまざまな規則やスケジュールについて概略を紹介している。

同じく激戦州で、投票日前の票の処理が可能なミシガン州でも、ベンソン州務長官がCBSの取材を受けた。票の集計にどのくらい時間がかかるかと問われた民主党のベンソン氏は、投票日翌日の6日の終わりまでに結果が分かるのが望ましいと答えた。

「我々は効率性よりも正確さと不安のなさを常に優先させる」(ベンソン氏)

接戦なら結果判明に時間要する場合も

それでも勝負が僅差(きんさ)にもつれ込む場合は、やはり決着まで数日を要する可能性がある。

ペンシルベニア州の選管トップを務めるアル・シュミット氏(共和党)は、米公共ラジオNPRとの最近のインタビューで、人々は投票終了後の一定期間、選挙制度を信頼する必要があるとの見解を示した。

「20年、我々は投票所が閉じた投票日の午後8時から結果が判定されるまでの期間を不安定な時期と見なしていた。人々は結果に対する信頼を損ねようとしていた」と、シュミット氏は振り返る。その上で、最終的に全ての票を集計した後、ペンシルベニア州の結果はそこまで競ってはいなかったと指摘した。

接戦の場合は時間がかかることもある。00年大統領選を覚えている年代の人なら、誰もがそう断言できる。この時はフロリダ州で接戦が繰り広げられたが、パンチカード式の投票用紙を使用した仕組みに不備が発覚。パンチが不完全だった一部の投票用紙を巡って論争が巻き起こった。

この年の選挙結果は、確定するまで1カ月以上かかった。36日後、連邦最高裁がフロリダ州での一部の再集計を停止させ、実質的にジョージ・W・ブッシュ氏を勝者とした。当時のゴア副大統領は12月13日に敗北を認めた。自身が敗れた大統領選で選挙人票の集計を監督した副大統領は、ゴア氏を含めて過去に3人しかいない。民主党候補のハリス副大統領は4人目になる可能性がある。逆に自らの勝利を監督することになるとすれば、副大統領時代のジョージ・H・W・ブッシュ氏以来のケースだ。

24年大統領選で誰が勝つのか誰にも分からないのと同様、勝者が確定するまでどれだけの時間がかかるのかも、完全には明らかではない。

本稿はCNNのザカリー・B・ウルフ記者の分析記事です。

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