米、シリアで困難な立場に 反体制派によるアサド政権への大攻勢受け
ワシントン(CNN) シリア第2の都市アレッポへの反体制派による奇襲を受け、米国は難しい立場に追い込まれている。シリア政府と反体制派のどちらにも完全には味方しない一方、同国に駐留する1000人近くの兵力は維持する必要がある。これらの兵士は、現在進行する過激派組織イラク・シリア・イスラム国(ISIS)掃討任務の一翼を担う。
国防総省のライダー報道官は2日、先週行われたシリア反体制派の奇襲から米国は距離を置くとした。反体制派はこの奇襲で素早く侵攻し、アレッポを数年ぶりに奪取していた。
ライダー氏は、今回の攻撃をテロ組織に認定された過激派組織「シャーム解放委員会」(HTS、旧ヌスラ戦線)の主導によるものと説明。米国はいかなる形でも関与しておらず、事態の沈静化を強く呼び掛けていると述べた。
これに先立ち、サリバン大統領補佐官(国家安全保障担当)は1日にCNNの取材に答え、HTSに対する強い懸念があることを認めつつ、一方でシリアのアサド政権にある種の圧力がかかる現状には不満を感じていないことを示唆した。同政権はロシアとイラン、レバノンのイスラム教シーア派組織ヒズボラを後ろ盾とする。
「従って状況は複雑なものとなっている。我々はこれを注視し、地域の提携国とも緊密な連絡を保っている」(サリバン氏)
一方、国務省のミラー報道官は2日、アサド政権の「行動に変化が見られない」として同政権への制裁を解除しない方針を示した。シリアが内戦状態に入った2011年以降、米国はアサド政権への制裁を強化している。市民への暴力を行使する同政権に圧力をかけ、シリア国民が望む民主的な政権以降を可能にするのが目的だと国務省は説明する。
シリアには現在ざっと900人の米兵が駐留し、対ISISの任務に当たる。駐留拠点は反体制派が侵攻したアレッポから離れているが、米軍はロシア政府と連絡を取り、「判断の誤り」を防ぐ対応を余儀なくされた。
アレッポへの奇襲を受け、ロシアは反体制派に対する空爆をアレッポ、イドリブ両県で実施した。国防総省のライダー報道官によると、現地の米軍司令官はホットラインを使い、ロシア側と通信経路が確保されていることを確認したという。
一方、シリアに駐留する米国と有志連合の軍に対して過去24時間で攻撃が行われたとの報道について、ライダー氏は米軍施設の一つにロケット弾が打ち込まれたと説明。ただ米軍に負傷者は出ておらず、施設の損傷も報告されていないと述べた。
ライダー氏によれば、こうした動きは現在シリア北西部で起きている状況とは全く無関係であり、同国における米軍の態勢には一切変更がないという。