「復活」したISISとアルカイダ、再び欧州を標的に 英MI5長官
ロンドン(CNN) 英情報局保安部(MI5)のケン・マッカラム長官は8日、過激派組織イラク・シリア・イスラム国(ISIS)と国際テロ組織アルカイダが「復活」して英国を脅かしているとの見方を示した。テロ事件は子どもやインターネットへの依存が強まり、情景が変わりつつあると指摘している。
マッカラム長官はロンドン市内で行った講演の中で、MI5が最近行った優先捜査は3分の1以上が海外のテロ組織に関係していたと述べ、中でもISISは「テロ輸出の動き」を再開していると指摘した。
テロ関連で捜査対象となった人物は、未成年が8人中1人超の割合を占め、2021年以来、3倍に増加した。
ウクライナや中東の戦争が世界の安全を揺るがす中、西側諸国はロシアやイランなどの国家が関与する破壊活動のリスク増大に対して警戒を強めている。
マッカラム長官は記者団に対し、MI5は17年3月以来、計43件のテロ計画を後半段階で阻止したと述べ、中には「大量殺人計画の最後の数日」だった集団もあると説明。摘発した相手は約4分の3がイスラム過激派で、残る4分の1は極右集団だったと語った。
さらに、「中東の出来事が英国でのテロの直接的な引き金になる」と述べる一方で、治安の乱れやヘイトクライム(憎悪犯罪)は増えているものの、テロ行為にはつながっていないと指摘した。
ISISについては、イラクとシリアにまたがって樹立を宣言した「国家」の崩壊から5年を経て、ISISはアフリカ、中東、中央アジア、東南アジアなど世界各地に分派が拡散するテロネットワークへと変貌(へんぼう)したと分析。「後退させられていた数年を経て、テロ輸出の動きを再開している」との見方を示し、アルカイダについては「中東の紛争を利用して暴力行為を呼びかけようとしている」とした。
マッカラム長官によると、ロシア軍参謀本部情報総局(GRU)は英国や欧州で混乱を引き起こすことを狙って放火や破壊行為などの作戦を展開しているという。
さらに、MI5と英警察は22年以来、イランの関与するテロ計画20件に対応したと語った。
MI5長官が公の場で発言するのは極めて異例。こうした機会は英国がテロの脅威に直面している状況を国民に認識してもらう目的で利用する傾向がある。
英国や米国はロシアのウクライナ侵攻以来、ロシアが破壊活動に関与したとして声高に非難してきた。欧州からは750人以上のロシア外交官が国外追放され、「その多くはスパイだった」とマッカラム長官は主張。「今後も我が国での侵害行為は続くだろう」とした。
マッカラム長官は、テロ事件で捜査対象になる未成年が増えていることも明らかにした。特に極右テロに関与する若者は、「オンライン文化を巧みに利用したプロパガンダに引き寄せられる」傾向があるという。
脅威の多様化を物語る事件として、マッカラム長官は10代の英国人が有罪を言い渡された3件を紹介している。「1人は英国のシナゴーグ(ユダヤ教礼拝所)襲撃を企てた。もう1人は米国の銃乱射事件に触発された内容を投稿した。3人目は音楽祭で人々を刺す計画を立て、テロのプロパガンダをネットに投稿した」