英政府、米国からのハッカー引き渡し要求に応じず 米軍不正アクセス事件
ロンドン(CNN) 米軍などのコンピューターに不正侵入したとして米国が長年にわたり身柄の引き渡しを求めていた英国人ハッカー、ギャリー・マッキノン被告(46)について、英政府は16日、引き渡しに応じない方針を決定した。
メイ英内相は、マッキノン被告のアスペルガー症候群とうつ状態を理由に、「彼が自らの命を絶つ危険はあまりに大きく、身柄引き渡しを決定すれば人権の理念に反する」と指摘、米国への移送命令は撤回すべきだと述べた。
今後は英国で裁判を受けさせるかどうかについて、英検察当局が検討する。
米政府は、マッキノン被告が2001年3月以降、英ロンドンの自宅から米航空宇宙局(NASA)や米軍などのコンピューター97台に不正アクセスし、約100万ドルの損害を生じさせたとして、米国で裁判を受けさせるために身柄の引き渡しを要求していた。
同被告も、NASAや米軍のコンピューターに侵入したことを認めているが、動機については、米国が未確認飛行物体(UFO)の存在を隠していることを暴くためだと主張していた。
マッキノン被告の家族や弁護士、人権団体は今回の英政府の決定を歓迎している。一方、米国務省のヌーランド報道官は16日、「ギャリー・マッキノンの引き渡しを拒むという決定に米国は失望している」とコメントした。
米大陪審はコンピューター犯罪など7件の罪でマッキノン容疑者を起訴問われており、有罪になれば、最大で罪状1件につき10年の禁錮と25万ドルの罰金を言い渡される可能性がある。