天安門事件から25年 後世に与えた影響は
鄧氏が事件から得た最大の教訓は、中国共産党への国民の信頼をつなぎ止めるためには、80年代に始めた市場経済化を続けるしかないという事実だった。天安門事件の後、鄧氏は改革の動きを再開、加速させ、その結果デモ弾圧を支持した保守派と対立することになる。
鄧氏は保守派との「人生最後の闘い」に勝利して、改革路線を確定させた。中国はここから経済大国への道を駆け上っていく。
鄧氏は一方で、共産党存続という目的のために、政治改革への新たな動きをすべて封じることも忘れなかった。同氏の後に続く指導者たちも同じ姿勢を貫いている。
中国の指導者らは天安門事件が党の正当性を損なう事態を恐れ、国民の記憶から事件を消し去ることに力を注いできた。事件について公の場で議論することは禁じられ、毎年この時期に天安門を口にする反体制活動家や法律家、犠牲者の遺族らは当局に抑え込まれてきた。
つまり共産党は、国民と取引をしたのだ。国民にはより大きな経済的チャンスと個人的自由を与えよう、その代わり党による権力独占には逆らうな、という取引だ。
広範に及ぶ政治的抑圧にもかかわらず、国民の多くはこの取引を受け入れてきた。
事件についての発言を封じられたまま目覚ましい経済成長を続ける年月のなかで、大多数の国民はいつしか89年の出来事を忘れていった。