米国防長官から「情けない」と評された欧州の軍事力、いよいよ覚醒か
ドイツが防衛力強化へ、訓練の様子は
ロンドン/パリ(CNN) トランプ米大統領がホワイトハウスでウクライナのゼレンスキー大統領に厳しい態度で臨んだことは、北大西洋条約機構(NATO)加盟国に衝撃を与え、米国が自分たちと共にロシアの侵略に対抗するという欧州の根強い幻想を払い去った。
動揺し、おそらくは恐怖さえ感じながらも、欧州は「トランプ時代」における自衛の必要性についてようやく目を覚ましたかもしれない。
欧州連合(EU)のラファエル・グリュックスマン欧州議会議員はCNNに「まるでルーズベルト(元米大統領)がチャーチル(元英首相)を(ホワイトハウスに)迎え入れ、彼をいじめ始めたかのようだ」と語った。
ヘグセス米国防長官が政権関係者とのグループチャットで、防衛に「ただ乗り」している欧州を「情けない」と評した1カ月の間に、欧州は数十年にわたる防衛に関するタブーを打ち破った。数週間前には考えられなかった政策が今や検討されているのだ。
最も大きな変化は、欧州最大の経済大国ドイツで起きた。次期首相が確実視されるフリードリヒ・メルツ氏は、議会で「債務ブレーキ」(政府の借り入れを制限する仕組み)を緩和する基本法改正案の可決を勝ち取った。
ドイツではこの法改正により、原則として防衛と安全保障への支出に対する制限が取り払われる。専門家は、同国の国防費が10年間で6000億ユーロ(約97兆円)に達するとの見方を示す。
国際シンクタンクである欧州外交評議会の上級研究員、ピョートル・ブラス氏はCNNに対し、ロシアによるウクライナ侵攻はドイツを揺さぶったが、「トランプショックによって初めて債務ブレーキを停止するという、真に抜本的な決定を下すに至った」と指摘した。
タブーが崩壊
隣国フランスではマクロン大統領が今月初め、自国の核戦力で守る範囲を同盟国にまで拡大することを検討していると述べている。同氏は長きにわたり欧州に対し、米国からの「戦略的自立」を呼び掛けてきた。
この発言の前には、メルツ氏が核抑止力の拡大をめぐり欧州の二大核保有国である英仏との協議を提唱していた。ポーランドのトゥスク首相はこの考えを歓迎。同国の核保有の検討さえ求めた。
一方、ポーランドとバルト3国のエストニア、リトアニア、ラトビアは対人地雷禁止条約(オタワ条約)からの脱退を自国に勧告する共同声明を発表した。同条約は1997年に締結され、長い間、大規模戦争終結の重要な節目と考えられてきた。リトアニアはすでに地雷8万5000個の購入を発表しており、ポーランドは100万個の国内生産を視野に入れている。
リトアニアは今月、クラスター爆弾禁止条約からも離脱した。締約国の離脱は初めてのことだ。
徴兵制も欧州大陸で復活している。デンマークは2026年から女性を義務的徴兵の対象とし、一部の職務の健康要件を引き下げた。
欧州の団結?
欧州は米国からのメッセージを受け取ったようではあるが、統一されたアプローチの話は時期尚早だ。
EUの行政機関である欧州委員会のフォンデアライエン委員長が欧州の再軍備に数十億ドルを投じる計画を発表したとき、スペインとイタリアは反発した。
イタリアのメローニ首相は、和平が実現した際にウクライナの平和維持のために派遣される欧州部隊の一部として自国の部隊を派遣する可能性についても否定した。これは、欧州大陸が分裂していることを示すもう一つの重要な問題だ。ロシアから遠い国ほど、経済より軍事を優先する可能性は低くなる。
スペインのサンチェス首相は今月、「我々の脅威はロシアがピレネー山脈を越えて軍隊を送り込んでくることではない」と述べた。同氏は欧州委員会に対し、南部地域が直面している課題は、東側が直面しているものとは異なっていることを考慮するよう求めた。
欧州外交評議会のブラス氏は、この地理的な分断は分裂を深める可能性がある一方で、欧州の完全な結束は常に「幻想」だと指摘した。
「本当に重要なのは、主要国が何をするかだ」と同氏はドイツ、フランス、英国、ポーランドに言及。「私は慎重ながら楽観的に見ており、私たちは今正しい道を進んでいると考えている」と述べた。