天安門事件から25年 後世に与えた影響は
若い世代は天安門事件について、政府の公式見解以外ほとんど知らずに育っている。それでも中国共産党にとっては相変わらず、あのような事件を二度と起こさないことが政策決定の中心的なテーマとなっている。
「アラブの春」や旧ソ連国家の「カラー革命」といった民主化運動に神経をとがらせ、国内の公安機関を強化し、チベット自治区や新疆ウイグル自治区の動きを厳しく取り締まる。服役中のノーベル平和賞受賞者、劉暁波氏をはじめとする反体制活動家や、地方でのデモ参加者に対する強硬な姿勢にも、このテーマが反映されている。
このアプローチは今のところ、全体として成功しているようだ。中国の指導部は、89年当時の大方の予想を上回る手腕と回復力をみせてきた。
しかし経済成長が鈍化して社会的、経済的緊張が高まり、インターネットなどの通信手段によって市民が発言力を増すという変化のなかで、共産党は今、新たな課題に直面している。これにともなって今後、天安門事件の記憶が新たな意味を帯びてくる可能性もある。
中国共産党にとって、6月4日は矛盾する2つの側面を持つ。国内では事件から25年を経た今も、「あの日、記憶にとどめるようなことは何も起きなかった」と、国民への必死の説得が続く。だが国外での6月4日は、党にとって49年の建国以来最大の危機となった事件を振り返り、改めて分析する機会となっている。