インド洋大津波から10年 復興後も心に残る傷跡
悲しみに暮れながらも、校長として学校に戻らなければならなかった。間もなく仮設校舎が完成し、子どもの権利擁護支援団体「プラン・インターナショナル」の支援で児童たちとともに新しい学校の構想を描き始める。半年後の2005年5月、新校舎が完成した。
207人いたラムンガ小学校の児童は115人に減っていた。学校ではすぐに授業を再開するよりも、子どもたちの心のケアに力を入れたという。
当時同校に通っていて、今は18歳になったメガワティさんは「本当にうれしかった。学校はとても大切だから」と振り返る。
今、ラムンガ小学校は明るさと活気に満ちている。児童たちは災害の危険についても学び、定期的に避難訓練も実施する。
当時2歳だったカハイディ君は、津波で姉を亡くした。12歳になった今は両親と共に暮らし、ラムンガ小学校に通う。学校では災害発生時の避難場所や避難の方法について教わり、心構えはできているというカハイディ君だが、「また津波が来たらなんて想像できない。そのことを考えると怖くなる」と打ち明けた。
ムハマドさんの長女は25歳になった。子どもも生まれ、最近、大学院を卒業した。
ムハマドさん一家や子どもたちは心の傷を負いながらも、全力で生活を立て直してきた。アチェの子どもたちは希望や夢をかなえるため、いつでも学校に戻れる機会が与えられている。
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本稿は国際NGOプラン・インターナショナルのグローバルプレスオフィサー、アンゲラ・シン氏による特別寄稿です