北朝鮮で大うけ、CNNカメラマンによる「フラフープ外交」の顛末記
北朝鮮の人々についてはこれまで、軍事パレードや国家行事のような場で、厳かな表情でテレビに映っているのしか見たことがなかったからだ。水族館に来ている人々は、家族や友人に囲まれ、リラックスしているように見えた。
ショーの第1部ではタイセイヨウマダライルカが登場。ガイドによると、北朝鮮周辺の海域に生息している種だという。こうしたショーでは大抵、バンドウイルカが使われることが多いが、経済制裁のため現在は輸入できない状況だ。「我々は主権国家であり、外圧には屈しない」との説明を受けた。
ショーでは、観客の中から数人がその場で選ばれて壇上に上がり、イルカと接することができる。司会の女性は観客席に降りてくると、登壇する女性をまず1人選び、次にCNN取材班一行が座る席に近づいてきた。
私はカメラのファインダーに顔をうずめ、多忙を装っていた。だが、司会者は私の真正面に立ち、もう無視することができない状況に。ついに登壇するよう声をかけられた。私は隣のCNN記者を指さし「彼に頼んでみて」と言ったが、司会者の意志は固い。会場は静まりかえり、全ての視線が私に注がれていた。
ここで拒否すれば会場内の全ての人を侮辱することになる。それにイルカに餌を与えれば済むことだろう。そう感じた私は立ち上がり、カメラを取材班に預け、司会者の後に続いて登壇した。