バングラデシュ系英国人のドキュメンタリー制作者シャフィール・ラーマンさんは、死亡したりけがをしたりした家族を連れて、血まみれの姿で国境を越えようとするロヒンギャの姿をカメラに収めた。
9月下旬にバングラデシュで会ったムムタズさんは、全身包帯姿で15日間も診療所のベッドから起き上がれず、話すことも水を飲むこともほとんどできない状態だった。しかし10月中旬になると顔や身体のやけどは徐々に回復に向かい、ラーマンさんに体験を語り始めた。
集団強姦や殺人、放火については、ミャンマーを脱出したロヒンギャの多くが証言している。国際人権団体のアムネスティ・インターナショナルは10月、トゥラトリ村の住民30人の証言をもとに、国軍による民族浄化の実態を告発する報告書をまとめた。
住民の証言によると、村の近くにヘリコプター数台が着陸したのは8月30日午前8時ごろ。兵士にラカイン州の仏教徒住民など50人ほどが加わり、ロヒンギャの住民に対して川岸に集まるよう指示した。
高台からこの現場を見ていたという男性によれば、兵士らは集まった住民に向けて無差別に銃を乱射し、同時に民家に火を放ったという。
「大勢の人が銃弾を浴び、うつ伏せに倒れた。地面に倒れた人たちは集められて切り刻まれ、後に川に投げ込まれた」。別の女性はそう証言する。
ロヒンギャ女性のハシナさんは、1歳の娘が生きたまま火を付けられたと訴え、「彼らは私の腕から娘を奪い取ると、火が付いた衣類の山に投げ込んだ」と涙ながらに振り返った。