脱北者が感じる「断絶」 南北の再統一に必要なものとは
ソウル(CNN) 脱北者のケン・オムさんが初めて韓国ソウルに足を踏み入れた当時、馬鹿馬鹿しい質問を何度も聞かされることになれる必要があった。
北朝鮮の兵士だったオムさんが脱北したのは2010年。当時29歳だった。「北朝鮮にアルコールはあるの」「それほど栄養不足で米が手に入らなかったなら、ラーメンを食べればよかったんじゃないの」。そんな質問をされたという。
仲間外れにされたような経験だった。オムさんは、ソウルにある脱北者向けの学校でCNNの取材に答え、アマゾンの部族の出身のように見られていたと振り返る。こうした質問は、韓国社会に溶け込もうとするのを難しくする日々の難題のほんの一例に過ぎない。
北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長と韓国の文在寅(ムンジェイン)大統領が先ごろ、歴史的な首脳会談を行い、南北の距離が近づいた。
韓国と北朝鮮が平和条約を締結し、非核化を本当に前進させることができれば、かつては考えられなかった朝鮮半島の再統一も現実味を増すように見える。
しかし、オムさんが韓国の同胞に感じる隔たりは、再統一の問題と、かつてのベルリンの壁よりも強固で不透明な境界の両側にいる人々にとって、それが何を意味するのか依然としてはっきりしていないことを示している。
70年にわたる分断は南北朝鮮の文化的な隔たりを急速に拡大させている。そして、それが、韓国に1人でたどり着き、支援してくれる家族も友人もいない脱北者に疎外感と困惑を与えることになる。
オムさんはソウルに来た当初、工場で働いた。「当時、私はまったく英語を話さなかった。単語ひとつ知らなかった」
オムさんは、仕事の性質上、工場で働くことで問題が起きるとは思っていなかった。