移植された臓器からがん発症、患者4人中3人が死亡 欧州
(CNN) 同じ人物から臓器提供を受けた欧州の患者4人がその後相次いで乳がんを発症し、うち3人が死亡したとの報告が、このほど米国の移植医療の専門誌に掲載された。研究者からは「極めて異例のケース」だと強調する声が上がっている。
報告の著者であり、オランダのアムステルダム大学で腎臓病について研究するフレデリーケ・ベメルマン博士は今回の事例について、移植免疫の分野に20年携わってきた中で初めて起きた「極めて異例」のケースだと指摘。一方で、移植医療の過程で何らかの問題が生じる「小さなリスクは常にある」とも述べた。
当該の臓器提供者は2007年に脳卒中で死亡した53歳の女性。医学的な症状は確認されておらず、提供された腎臓、肺、肝臓、心臓にも悪性腫瘍(しゅよう)は見られなかった。
提供を受けた患者3人のうち、肺の提供を受けた42歳の女性は移植手術の16カ月後に臓器の機能不全のため入院した。その後リンパ節にがん細胞が見つかり、DNAを分析した結果、肺を提供した女性のものと一致することが分かったという。
左の腎臓の提供を受けた62歳の女性と、肝臓の提供を受けた59歳の女性も同様のがん細胞の転移によってそれぞれ13年と14年に死亡した。4人目の患者は、提供された右の腎臓の摘出や免疫抑制療法の停止、化学療法の実施により一命をとりとめた。
研究の結果、提供者の臓器には検査で検出できないほど微小ながん細胞の組織がすでに転移していたとみられている。臓器移植を通じてがん細胞が別の患者に伝達される事例は過去にも報告されているが、乳がんで確認されたのは初めてだという。
臓器移植は皮膚がんの大部分などの例外を除き、悪性腫瘍を持つ患者からの提供が認められていない。臓器提供者から腫瘍が伝達されるリスクは1度の移植につき0.01~0.05%とされる。
英キングス・カレッジ・ロンドンのグレアム・ロード教授は、がんの早期発見の取り組みにおける実験的なプログラムに言及し、今回のような「極めて異例の微小転移の発生」を将来回避できる可能性があるとの見解を示した。