客室乗務員がはしかに感染、昏睡状態に イスラエル
(CNN) イスラエルの国営航空会社エル・アル航空の客室乗務員がはしかに感染し、昏睡(こんすい)状態に陥っている。同国保健省が明らかにした。
保健省によると、はしかに感染したのは43歳の女性客室乗務員で、はしかのウイルスに起因する合併症の脳炎を引き起こし、10日前から昏睡状態に陥った。感染前まで健康状態は良好だったという。
この乗務員は米ニューヨークかイスラエル、または両国を結ぶ便の機内ではしかに感染した可能性がある。衛生当局は、機内でこの乗務員からウイルス感染が広がった可能性はないと思われると説明している。
現在は自力呼吸ができず、テルアビブ近郊の病院の集中治療室に入院して人工呼吸器を装着されている。発熱の症状が出たのは3月31日で、その日のうちに入院していた。
米国とイスラエルでは、保護者が子どもに予防接種を受けさせていなかったことが原因で、はしかの感染が広がっている。しかし客室乗務員は子どもの時に予防接種を受けていたにもかかわらず、感染を食い止められなかった。
この乗務員が子どもの時に受けたはしかの予防接種は1回のみだった。しかし1回の接種では約93%の効果しかないことが後に判明し、米国では1989年から子どもに2回の予防接種を受けさせるようになった。米疾病対策センター(CDC)によると、2回の接種による効果は97%程度とされる。
CDC顧問のウィリアム・シャフナー氏ははしかの感染拡大について、「こういう事態が遅かれ早かれ起きることはわかっていた」「子どものワクチン接種を控える人々で深刻なウイルス感染が再発し、それがその集団を越えて広がりだしている」との見方を示した。
イスラエル保健省のイタマル・グロット氏は、同国で昨秋に感染が急増したのはユダヤ超正統派の大勢の人々がウクライナを巡礼で訪問したときだったと指摘する。ウクライナは過去1年間で7万2000人に感染し、世界で最も感染者数が多い国となっている。イスラエル人の感染者のうち85~90%は超正統派の人々だという。
グロット氏によると、ユダヤ教ではワクチン接種に反対するような教えはなく、宗教指導者も健康維持のためにワクチン接種を勧めている。ただ、超正統派は大家族構成で子どもが多い傾向があり、1人目や2人目は接種をしてもそれ以降の子どもに接種を受けさせる時間的余裕がないこともあるという。
イスラエルの保健当局は国内での感染拡大を抑えるため、診療所の営業時間延長や移動式診療所、新聞広告での周知の取り組みを始めている。