WHO事務局長、高齢コロナ患者の軽視を非難 「道徳的破綻」
(CNN) 世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長はこのほど、新型コロナウイルス感染症による高齢者の死亡率が高い状況を「問題ない」とする声があると述べ、「道徳的破たん」を示すものだと非難した。
テドロス氏は今週の記者会見で、「高齢者が死んでいく状況が問題ないはずがない。これは道徳的破たんだ」と指摘。「若者であれ高齢者であれ、あらゆる命はかけがえのないものであり、我々はそれを救うために手を尽くす必要がある」と述べた。
WHOの先週の集計によると、欧州では死者の88%近くを65歳以上の高齢者が占める。また英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスによると、新型コロナによる世界の死亡例のほぼ半数は介護施設で起きているという。
だが、コロナによる死者の大多数を高齢者が占める状況にもかかわらず、高齢者の直面するリスクに対し、世界の指導者からは冷淡な反応が目立つ。
スウェーデンがロックダウン(都市封鎖)を見送る決定を下した際、同国の疫学責任者アンデシュ・テグネル氏は地元紙に、「(公衆衛生当局は)高齢者施設で感染が広がる可能性がここまで高いとは把握していなかった。これほど死者が出ることも想定外だった」と説明した。
その一方で、スウェーデンが主要戦略に据えたソーシャル・ディスタンシング(社会的距離の確保)は「うまくいった」との見方を示し、「全く異なる方法で対応すべきだったとは思わない」とした。
オーストラリアのアボット元首相も1日、英国で演説し、一部の高齢コロナ患者については自然に任せて亡くなるのをみとる選択肢もありうると示唆した。