アルゼンチン上院、人工妊娠中絶合法化の法案可決
アルゼンチン・ブエノスアイレス(CNN) 南米アルゼンチンで30日、人工妊娠中絶を合法化する法案が上院を通過した。カトリック教徒が多数を占める同国で中絶の権利を求めてきた運動の画期的な勝利だった。
フェルナンデス大統領も支持する中絶合法化の法案は、賛成38、反対29の多数決で上院を通過した。賛否の差はもっと小さいと予想されていた。
国会議事堂前には賛成派と反対派の市民らが集まっていた。徹夜の審議を経て30日未明に可決の一報が伝わると、賛成派から大きな歓声が上がり、喜びの涙を流す人もいた。
姉妹2人が非合法の中絶手術を受けたという女性は、「これで若い人たちが、必要があれば安全に中絶できるようになる」と感極まった様子だった。
法案は妊娠14週までの中絶を全て合法化する内容。現行法で中絶が認められるのは、レイプによる妊娠か母親の生命が危険にさらされる場合に限られており、それ以外の中絶は全て違法とされ、15年以下の禁錮刑の対象とされていた。
人工妊娠中絶に反対する聖職者の人々=29日、ブエノスアイレス/Natacha Pisarenko/AP
フェルナンデス大統領は昨年12月の就任前から中絶の合法化を訴え、中絶禁止のために「弱い立場の女性や貧しい女性」が不当に罰せられていると指摘していた。大統領によると、違法な妊娠中絶手術による死者は1983年以来、3000人を超す。国家保健省は、違法な中絶手術は年間37万1965~52万2000件に上ると推計していた。
生殖の権利保護団体によると、中南米諸国のうち人工妊娠中絶を認めているのはキューバ、ウルグアイ、仏領ギアナ、ガイアナのみ。
一方、エルサルバドル、ドミニカ共和国、ハイチ、ホンジュラス、ニカラグア、スリナムはほぼ全面的に中絶を禁止。コロンビア、コスタリカ、グアテマラ、パナマは母親の健康や命を守る目的のみの中絶を認めている。