ノーベル平和賞、マリア・レッサ氏とドミトリー・ムラトフ氏に授与 表現の自由守る報道を評価
(CNN) ノルウェーのノーベル委員会は8日、2021年のノーベル平和賞をジャーナリストのマリア・レッサ氏とドミトリー・ムラトフ氏に授与すると発表した。両氏によるフィリピンとロシアでの粘り強い調査報道が、表現の自由を守る取り組みにつながったとした。
同委員会によれば、レッサ氏は調査報道機関ラップラーの共同創設者。精力的な活動でフィリピンにおける権力の乱用や政府による汚職、暴力行為などの実態を暴いてきた。
ラップラーは多くの死者を出しているドゥテルテ政権の麻薬取締りに対する批判的な姿勢で知られる。
マリア・レッサ氏/Isaac Lawrence/AFP/Getty Images
レッサ氏はこのほか、表現の自由を守る戦いを世界規模で展開。フェイスブックをはじめとするソーシャルメディアがどのような手法でフェイクニュースの拡散に利用されているかを明らかにしたという。
ムラトフ氏は、ロシアの独立系新聞ノーヴァヤ・ガゼータの創設者の一人。ノーベル委員会によると同紙は1993年の創刊以来、汚職や警察による暴力、不法逮捕、選挙不正といったテーマで批判的な記事を発表してきた。
同紙に敵対する勢力は脅迫や暴力、殺人といった手段に訴えることも辞さない。創刊以降、同紙に籍を置く6人のジャーナリストが殺害されたとノーベル委員会は述べている。
ドミトリー・ムラトフ氏/Alexander Zemlianichenko/AP
同委員会のレイスアンデルセン委員長は、「自由で独立し、事実に基づくジャーナリズムは、権力の乱用やうそ、戦争のプロパガンダから身を守る役割を果たす」と指摘。今回の受賞者を選出するうえで念頭に置いたのは、「このような基本的な権利を保護する重要性を明確に示すことだった」と語った。