北朝鮮が発射と主張の「極超音速ミサイル」、事実なら東アジア軍事情勢に変化も<上>
極超音速滑空兵器の仕組み
弾道ミサイルと同様、極超音速滑空兵器はロケットによって大気圏の高い位置へと発射される。ただ「憂慮する科学者同盟」の報告書によると、弾道ミサイルが高度約1000キロの高さから降下を始め、その後はおおむね重力によって推進するのに対し、極超音速ミサイルはより早い段階で地球に戻った後、飛行経路を平らにする。飛行高度は地上わずか数十キロだという。
その後、極超音速ミサイルは内蔵する航法装置で軌道修正を行い、最大で音速の12倍のスピードで目標に向かい続ける。
米空軍大学中国航空宇宙研究所の研究責任者、ロデリック・リー氏は、極超音速ミサイルは飛行高度がより低いため、レーダーに探知されない時間がより長くなると指摘。「防御する側にとっては対応が非常に難しくなる」と付け加えた。
配備可能な極超音速ミサイルを保有するとみられているのは、ロシアと中国の2カ国のみだ。
ロシアは2019年12月、「アバンガルド」と呼ばれる極超音速ミサイルシステムが就役したと発表。プーチン大統領は18年の議会演説で、アバンガルドシステムは欧米の防空網に対して「ほぼ無敵」だと豪語した。
プーチン氏は20年1月には、クリミア沖で二つ目の極超音速システム「キンジャル」の試験を監督した。
一方、中国は19年の軍事パレードで、極超音速滑空体の展開に使える「DF17」ミサイルを誇示した。戦略国際問題研究所ミサイル防衛プロジェクトの報告書では、米国防当局者の話を引用する形で、DF17は最大2500キロメートル先にある目標の数メートル以内に弾頭を着弾させることができると分析している。
米ワシントンの軍備管理協会(ACA)の先月の報告書によると、米国は現在、8種類の極超音速兵器を開発中。米国防総省の国防高等研究計画局(DARPA)は先週、1週間前に極超音速兵器の飛行実験に成功したことを明らかにした。
4月には、国防総省が極超音速ミサイル実験の失敗を公表していた。