インド首都を覆う「サイレントキラー」、汚れた大気を吸うしかない人も
「サイレントキラー」
スモッグに覆われているインドの都市はデリーだけではない。
モニタリング団体のIQAirによると、昨年には世界で汚染が深刻なワースト10都市のうち9つをインドの都市が占めた。
世界保健機関(WHO)によると、大気汚染が原因で早死にする人は世界で推計年700万人に上る。心血管疾患やがん、呼吸器感染症による死亡率の増加が主な要因だ。
米シカゴ大学エネルギー政策研究所(EPIC)の最近の調査によると、大気汚染はインド人数億人の余命を9年間も縮めている可能性があるという。
この調査ではまた、インドに住む13億人は1人残らず、WHOが定めた指針を超える水準の年平均汚染レベルを経験していることも判明した。
2019年、インド中央政府は国を挙げた大気改善策を発表。24年までに粒子物による汚染を最大30%減らす目標を掲げた。都市ごとに具体的な計画が策定され、デリーでは道路の交通量や野焼き、道路のほこりを減らしたり、よりクリーンな燃料の使用を促したりする措置が導入された。
しかしここ数年、インドの汚染問題はむしろ悪化している。その一因は化石燃料、特に石炭への依存にある。
英グラスゴーで最近開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、インドも含めた国が土壇場で合意案の文言を、石炭の「段階的廃止」から「段階的削減」に修正することを求めた。
環境保護団体グリーンピースによるIQAirのデータの分析によると、デリーでは毎年、大気汚染の影響で数万人が命を落としているという。
だが、大気の質が悪化しているにもかかわらず、それに慣れきった一部のデリー住民は気にする様子を見せない。
多くの人はマスクなしで通りを歩き、汚染レベルを甘く見る雰囲気が広がっている。
前出の活動家のドゥベーさんは、大気汚染は「エリート主義的な」問題とみられていると語る。
「大気汚染はサイレントキラーだ」「意識の欠如がある。人々は問題の深刻さに気づいていない」