北京への渡航、かつてないほど困難に ゼロコロナ対策強化で
食事のデリバリーはできないが、隔離費用には1日3食の食事が含まれている。ただし、どのホテルに案内されるかによって変わってくる。しかも隔離施設は選べない。
食事はプラスチック容器に入ったものが1日3回、ドアの前に置かれた椅子に届けられた。ご飯と米、スープ、肉と野菜の炒め物というのが定番だった。間食には東京から持参した軽食を食べた。隔離施設の食事がお粗末だという話を聞いていたが、幸い筆者のホテルでは食事は気にならなかった。
客室には冷蔵庫も電子レンジもなく、ランドリーサービスも提供されなかった。支給されるタオルは21日間を通して1枚だけ。筆者はエクササイズ用にヨガマットと縄跳び、ウェートトレーニングの道具を持参していた。気温はカ氏85度(セ氏30度)と暑かったにもかかわらず、感染が広がるのを懸念して、ホテルのエアコンは作動していなかった。
この先も陰性判定が続いたとしても、北京にはたどり着けないかもしれない。北京で全面的なロックダウンが敷かれれば、フライトは全便欠航になるだろう。
今回の感染拡大の前でさえ、中国国内の「感染リスクが高い」地域から来た人々は北京市内の政府隔離施設でさらに14日間の隔離を義務付けられていた。幸い雲南は今のところ危険地域には該当していない。感染リスクの低い地域から来た国内訪問者は、少なくとも7日間自宅待機して健康状態を監視される。
中国当局は、ゼロコロナ政策のおかげで中国では感染死者数の増加を防ぐことができたとし、高齢者や子どもなど脆弱(ぜいじゃく)な人々へのワクチン接種の時間を稼ぐためだとして、政策を強化している。
国家衛生健康委員会の李斌副主任は29日、「コロナ対策がなかったら大人数が感染して重篤患者や死者が増加し、医療制度のひっ迫を引き起こすだろう」と語った。
だが批判的な人々は、ゼロコロナ政策は科学よりも政治のためだと言う。
習主席は直々に「ゼロコロナ」にお墨付きを出し、政府関係者もしばしば感染死亡率の低さを引き合いに出して、中国の制度が欧米より優れていると主張してきた。だが欧米ではワクチン接種率の上昇に合わせて規制が緩和されている。
だが中国では一向に変化の兆しが見えず、人々は次第に疲弊している。
パンデミックも3年目に突入したが、中国はいまだコロナとの共存を拒んでいる。代償がどれだけ大きかろうと、1人の感染者も許されない。