欧州は「AIの競争に参加していない」、マクロン仏大統領が危機感

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CNNインタビューに応じるマクロン仏大統領

パリ(CNN) フランスのマクロン大統領は10日までに、パリのエリゼ宮(大統領府)で、CNNの単独インタビューに応じ、人工知能(AI)の開発をめぐり、「我々は現在、競争に参加していない」と語った。

企業寄りの姿勢で知られるマクロン氏だが、マクロン氏にとってAIに関する欧州の見通しは憂慮すべきものであり、AI市場での遅れが欧州にとって大きな損失につながる可能性がある。

マクロン氏は「我々にはAIのアジェンダ(政策)が必要だ。なぜなら、AIに関して米国や中国との溝を埋めなければならないからだ」と語った。マクロン氏は、欧州が単なるAIの消費者となり、科学技術に関する将来の方向性や開発に関して支配力を失うことについて懸念を示した。

今週パリで「AIサミット」が開催される理由のひとつがこれだ。現在の国際社会における議論と意思決定の中心にフランスを据えようとするマクロン氏の最新の取り組みだ。

マクロン氏はパリに本社を置くIT企業ミストラルについて、繰り返し喧伝(けんでん)している。ミストラルは、米オープンAIに対抗する欧州企業と広くみなされている。

ミストラルは、より少ない計算能力で同じ結果が得られるとして米国のライバル企業に匹敵する能力を誇示していたが、中国のスタートアップ企業「ディープシーク」の登場によって圧力に直面している。

原子力発電が主力のフランスはエネルギー輸出国であり、電力の消費量が多いデータセンターの開設をめぐっては、うらやましがられる立場にある。

フランスは、欧州最大規模のスーパーコンピューターを今秋までにパリ郊外に導入する予定だ。

このモン・バレリアンの敷地は軍事施設となり、大規模なAIの能力をフランスの次期空母の構造など設計や工学に関する問題の解決に役立てる。国防省によれば、AIはドローン(無人機)に対する妨害など将来の軍事技術やその実践の改善にも使われる。

だが、それは例外だ。欧州が保有するコンピューター能力は世界の3~5%だが、マクロン氏は、この余剰能力が欧州のAIの未来の扉を開くことを期待していると語った。マクロン氏は世界のデータセンターの20%を建設することを目標としている。

マクロン氏によれば、これには特に米国と中東の湾岸諸国からの資金提供が鍵となる。

マクロン氏は、欧州がこの分野を「もっと改善しなければならない」と指摘した。

トランプ米大統領による欧州の同盟国に対する関税の脅しが現実となった場合、欧州内で資金を見つけることは、思わぬ恩恵をもたらすかもしれない。

トランプ氏は1月、世界経済フォーラム(WEF)の年次総会(ダボス会議)で、「米国の観点からみると、EU(欧州連合)は我々を非常に不当に、非常にひどく扱っている」と語り、EUに対する課税の可能性に言及した。

トランプ氏は、EUに対する貿易赤字を非難。政府の統計によれば、米国のEUに対する貿易赤字は2024年、269億ドル(約4兆円)増加して2356億ドルに達したという。

マクロン氏はこうした主張に反論し、貿易赤字は欧州のデジタルサービスへの多額の支出を無視していると指摘した。

マクロン氏は、関税の可能性への対応として、欧州は米国と中国の競争から域内の生産者を保護することに努める必要があるとし、重要な点として、欧州の貯蓄の米国への「流出」を阻止するために投資に対する規制を緩和する必要があると述べた。

マクロン氏は、競争力が鍵だと語った。

マクロン氏は「私はAIのために戦う」と述べ、欧州の競争力を高めるビジネス環境の整備を訴えた。

マクロン氏は、米国や中国のAI政策に対抗するため、2月と3月にAIの新興企業の規制に関する改革のロードマップ(工程表)の発表が行われると語った。

マクロン氏は、一部の規制の廃止や現在の環境の簡素化に注力しなければならないと述べた。「欧州は規則を簡素化し、より事業を行いやすくし、米国と歩調を合わせる必要がある」

マクロン氏は、今回のAIサミットが、少なくともAI分野にとって欧州への「警鐘」となることを期待していると語った。

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